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2017年1月 2日 (月)

離婚訴訟で未成年者の親権者を非監護者であった父親とした事案

千葉家裁松戸支部H28.3.29      
 
<事案>
平成22年5月6日、Xが長女を連れて自宅を出て別居状態。 
Yは、子のが監護者指定及び子の引渡し申立事件並びにこれを本案とする審判前の保全処分申立。
Xも子の監護者の指定事件。
⇒家裁は平成24年2月28日、長女の監護者をXと定め、Yの申立てをいずれも却下。
Yは、その後2度にわたって、子の監護者の変更を求める申し立てをしたが、いずれも却下。

平成24年
Xは、婚姻関係の破綻を理由に、離婚及び慰謝料500万円の支払を求め、附帯処分として、養育費の支払及び年金分割を求めた。
Xは、親権者の指定について、長女はXとともに安定した生活を送っていること、監護者指定の審判において、Xが監護者として指定されていることなどから親権者をXと指定するべきであると主張。
Yは、離婚請求の棄却を求めるととも、予備的に、長女の親権者をYと定めるべきであると主張し、その場合の附帯処分として、長女の引渡しのほか、Xと長女との面会交流に関して、時期、方法等を定めることを求めた
 
<規定>
民法 第819条(離婚又は認知の場合の親権者)
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
 
<判断>
婚姻関係の破綻⇒離婚請求を認容
慰謝料請求を棄却
年金分割についての請求すべき割合を0.5

主たる争点である親権者の指定について、
①原告は被告の了解を得ることなく、以来、今日までの約5年10か月間、長女を監護し、その間、長女と被告との面会交流には合計で6回程度しか応じておらず、今後も一定の条件のもとでの面会交流を月1回程度の頻度とすることを希望している。
②被告は、長女が連れ出された直後から、長女を取り戻すべく、数々の法的手段に訴えてきたが、いずれも奏功せず、爾来今日まで長女との生活を切望しながら果たせずにきており、それが実現した場合には、整った環境で、周到に監護する計画と意欲を持っている
③長女と原告との交流については、緊密な親子関係の継続を重視して、年間100日に及ぶ面会交流の計画を予定している。

長女が両親の愛情を受けて健全に成長することを可能にするためには、被告を親権者と指定するのが相当

Xの主張:長女を慣れ親しんだ環境から引き離すのは長女の福祉に反する。
vs.
今後長女が身を置く新しい環境は、長女の健全な成長を願う実の父親が用意する整った環境であり、長女が現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない
加えて、年間100日に及ぶ面会交流が予定されている。
⇒原告の懸念は杞憂に過ぎないというべき。
 
<解説>
●親権者指定の判断基準
もっぱら子の利益ないし福祉の増進という観点から行われるべき。

何が子の利益にあたるか?
父母のいずれが親権者として適格であるかを当該事案における諸事情を総合的に比較衡量して決定される。

父母の側の事情:
監護能力
精神的・経済的家庭環境
居住・教育環境
子との親和性
監護補助者の有無

子の側の事情:
子の年齢・性別・心身の発達程度
従来の環境への適応状況
環境の変化への適応性
子の意向
父母及び親族との親和性

次第に子の意向、子と親との情緒的結びつきなど、主観的要素を重視する傾向

裁判例においては、諸事情をある程度相対的に比較する基準
①乳幼児については、母親優先の基準
②子の健全な成長のためには親と子の不断の心理的結びつきが重要であって、養育監護者の変更は子の心理的不安定をもたらす⇒子を養育看護する者を優先させるべきとする現状尊重の基準(継続性の原理)
③子の意思尊重の原則(家事事件手続法169条2項、子(15歳以上のものに限る)の陳述を聴かなければならない。)
④多面的な人間関係を構築する可能性を保障⇒兄弟姉妹不分離の原則。
 
●本件 
親権者の適格性を基礎づける事情として面会交流の適切な実施の可能性を考慮している。
当事者が面会交流を一切拒否しているような場合はともかく、面会交流の方歩う頻度について意見を述べている場合には親権者の適格性と切り離して判断することが妥当な場合もあろう。
本件では、Xからの申立てがないにもかかわらず、親権者となるべきYからの申立てによって、Yへの面会交流の義務を命じたのは、それがYへの親権者指定のいわば条件となっているからと思われる。
but
当事者双方の協力が不可欠な面会交流の実施を条件的なものとすることは慎重であるべきとする異論もあり得る。

判例時報2309

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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