公訴権の濫用は否定したが、刑が免除された事案
横浜地裁H28.4.12
<事案>
検察官は、被害者の障害を「頸椎捻挫等で約1週間の通院加療見込み」とする医師の診断等に基づいて被告人を一旦不起訴処分⇒その後、被害者から肋骨骨折、頸椎捻挫捻挫等の申告と医師の回答⇒「症状固定まで約244日間を要する肋骨骨折等」とする公訴事実により被告人を起訴⇒証拠調べを終えた段階で、被害者の傷害を「加療約二週間を要する頸椎捻挫等」に訴因変更し、この「頸椎捻挫等」に肋骨骨折は含まれない旨釈明した上で、論告を行い、罰金30万円を求刑。
<判断>
本件起訴は公訴権の濫用に当たらない。
被害者の傷害を「加療約1週間を要する頸椎捻挫」等と認定し、過失運転致傷罪の成立を認めた。
①検察官において、被害者にうつ病等の精神症状があることも踏まえて、関係証拠をより慎重に検討していれば、いったん不起訴処分となった本件が、そのまま起訴されなかった可能性があること
②被告人の過失が単純かつ比較的軽微なものであること
③被告人が長期間にわたって応訴を強いられたという訴訟の経過等
⇒
被告人に対し刑を免除した。
<解説>
最高裁昭和55.12.17:
検察官の訴追裁量権の逸脱によって公訴提起が無効になる場合を限定するとともに、審判の対象とされていない他の事件の公訴権の発動の当否を軽々に論定することは許されない旨指摘。
判例時報2310
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