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2017年1月 5日 (木)

情報システムのパッケージソフトの導入請負契約に基づく未払請負代金請求等

東京高裁H26.11.26      
 
<事案>
業務を履行したのに、Yが請負代金を支払わないと主張して、Yに対し、未払請負代金と遅延損害金の支払を求めた。
 
<争点>
①本件契約においてXが履行すべき業務の合意(パッケージソフトの導入合意か、新システム開発の合意か)
②本件契約はYの錯誤により無効となるか
③本件契約をXの詐欺により取り消すことができるか
④Xによる仕事の完成及び提供があったか
⑤Xが本件プロジェクトを管理する義務の不履行があったか
 
<原審>
Yの契約締結の意思表示に錯誤あり⇒Xは契約に基づいて請負代金を請求することはできないとして、請求棄却。 
 
<判断>   
●債務の内容について
本件本件基本合意と本件契約書による合意の関係に着目し
①一定の時期までの間に、X・Y間で本件基本合意が成立し、これに基づいて、キックオフミーティングが開催され、Xによる作業が開始され、その作業にはYのプロジェクトメンバーを参加していた
②その後、YのA専務は本件契約書に調印した
③本件契約書は、本件基本合意の対象となった業務のうちのプロジェクト準備フェーズ及びビジネス設計フェーズを対象とするもの
④本件契約書の調印時までに、Xから提出された契約書の案に一部変更が加えられたことはあったが、本件基本合意の内容が修正されたことはなかった

本件契約書は、基本合意のうちのプロジェクト準備フェーズ及びビジネス設計フェーズに関する部分について、既に合意され、それに基づいて作業が行われていた基本合意の内容を確認し、更にこれに付加する内容を詳細に規定したものであり、本件契約書には基本合意の内容も含まれている
X・Y間では、本件基本合意でも、本件契約書にA専務が調印した時点での契約内容としても、新システム開発の合意がされたものでなく、パッケージソフトの導入合意がされた
 
●Yの錯誤について:
Yが新システム開発の合意をする内心的効果意思を有していたと認めることはできない⇒錯誤の主張は失当。 

●Xの提案はシステム開発を内容としていたものではない⇒欺罔行為をしたとはいえない。 

①Xは、プロジェクト準備フェーズについて順次データで送付し納品を完了し、ビジネス設計フェーズについてもYに提供したが、Yは受領を拒絶。
②後者には、納品物の一部に未完成のものがあるが、これはYが本件プロジェクトを一時凍結したことにより打合せ作業ができなかったことによるものであり、Yの責めに帰すべき事由によってその債務を完全に履行することができなかったもの
本件契約に基づき、請負代金の全額を請求することができる
 
<解説>
近時のシステム開発における裁判例:

①ソフトウェア開発契約において、請負人が仕事を完成させたということができるための最後の工程が、シナリオテストを終えて一応の品質の確保されたこと。
それを終えて納品された以降に発見される不具合・障害は、瑕疵担保の問題。
納品された新基幹システムに順次、長期間にわたって軽微とはいえない瑕疵が発現した上、不具合・障害が更に多数発生する原因となる可能性のある事情も存在。
瑕疵担保責任に基づくソフトウェア開発契約の解除を有効とした事例。

②請負型のソフトウェア開発契約において、原則として、仕事完成のためにユーザーによる検収への協力が不可欠であり、協力がなく検収が完了できない場合には、確定された仕様を満たす状態のソフトウェアを、ユーザーにおいて検収できる状態にしていれば、仕事完成が認められ、また、初期段階でのバグの発生は技術的に不可避であり、実務的にも納品後のバグ対応が織り込み済みであることから、順次解消可能なバグの存在は、ソフトウェア完成の認定を妨げるものではない
遅くともテスト稼働の時点におけるシステムの完成を認めた事例。

③システム開発会社XがY社との間で締結した、パイロットシステム開発契約、業務管理システムの使用許諾契約(第1次、第2次)について、パイロットシステムは債務の本旨に従った内容で納品され、また、第一次使用許諾契約に関してアップロードされた管理システムも債務の履行として許容される程度に完成されていた。but第二次使用許諾契約に関する追加システムは、必要な機能を欠く不完全なものであった。
同契約の解除を認め、追加システムの未払使用料に関するXの本訴請求を否定して、同契約に関するYの既払代金相当額の返還請求を認容

④X・Y間のシステム開発において開発工程を全3のフェーズに分割して行い、多段階契約方式が採用された。フェーズ2の作業について減額が行われるなどした後、新フェーズ3の発注はYにされなかったケースにき、フェーズ毎の個別契約の締結をまって条件等が定まるものであり、Xの期待感は保護に値するものではない。⇒不法行為に基づく損害賠償請求を否定。

システム開発契約など開発型契約における論点はさまざまであるが、その審理においては合意内容の事実認定をいかにしていくかという問題に収斂することが多い。

判例時報2310

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