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2017年1月 8日 (日)

火災事故を理由とする企業総合保険契約に基づく保険金請求訴訟で保険会社の免責の主張が否定された事例

広島高裁H27.11.18      
 
<争点>
企業総合保険契約の普通保険約款に定めた「保険契約者の故意若しくは重大な過失又は法令違反によって生じた損害に対しては、保険者が保険金を支払わない」との免責条項が、本件火災事故で適用されるか。 
 
<事案>
消防署の火災原因判定書によると、本件火災の出火原因としては、
A:火災が起きた保険対象建物内の電気配線であるFケーブルがショートしたこと
B:保険契約者(クリーニング事業者)の顧客の中にエステティックサロンが含まれており、そうした顧客から保険対象建物内へ運び込まれたタオルにエステオイルが付着しており、そのオイルが自然発火した
C:保険契約者である原告の代表者又はその意を受けた者が放火したこと
の3つの可能性。
 
<一審>
ABの可能性は著しく低いとして除外。
建物内に火気がなく、無施錠⇒放火が出火原因と認めるのが相当
保険契約者の代表者には放火の動機が十分にあり、言動に不自然不可解な点が多々見られる⇒放火は同代表者又はその意を受けた者によると認めるのが相当
 
<判断>
まず、C放火が火災原因かを最初に検討し、
①出火場所の焼残物からは油性成分が検知されなかったこと
②出火場所に近い場所から油性成分が検出されたものの、一般に助燃剤として認識されるガソリンではなく、クリーニングの業務で日常的に用いられてきたシリコン溶液及び殺虫剤(灯油)の可能性がある
③本件火災当時、保険契約者は金融機関からの借入の返済を遅滞していた事実は窺われず、財務状況は改善傾向にあるし、本件火災後も新たに金融機関から高額の融資を受けて、建物の解体撤去等を行った上で操業を再開し事業を継続⇒保険契約者に放火の動機を裏付けるような経済状況、行動は認められない。

放火が火災原因とは認められないし、
保険契約者の代表者が方かを実行し又は第三者に実行させたとも認められない。

ABのいずれの可能性も否定されない。

保険者の免責を認めず、保険者に保険金の支払を命じた。
 
<解説>
火災保険契約に基づく保険金請求における故意免責の立証責任は、保険者が負う。 
故意免責の成否の判断に当たっては、直接証拠が存在することは少なく、間接事実を積み上げていく必要のある場合が多い。

間接事実の類型:
(1)火災の原因が放火と認められるかについて
①出火箇所及び出火態様
②出火日時
③放火以外の出火原因の可能性

(2)放火について請求者が関与したと認められるかについて
①事故の客観的状況等(建物出入口等の設置及び施錠状況、かぎの管理状況)
②請求者等の事故前後の行動等(火災前後の請求者等の行動の不自然性、供述内容の不自然性及び変遷等、アリバイ)
③請求者の属性・動機等(請求者等の経済状態、保険事故により請求者等が受ける利益、同種事故の経験の有無)
④保険契約に関する事情(保険契約締結に至る経緯、保険契約締結と火災発生との時間的近接性)

一審判決:法海外の出火の可能性が著しく低いとして排斥するという消去法⇒放火が出火原因と認定。

本判決:直接的に火災原因が放火であるかを中心に検討し、放火と認めるだけでの間接事実に乏しいと判断。
補足的に、他の出火原因の可能性が排除できないと判断。

判例時報2310

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