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2017年1月22日 (日)

水俣病認定事例

新潟地裁H28.5.30      
 
<事案>
新潟市長が、原告らの公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定申請をいずれも棄却⇒原告らが、各処分の取消を求めるとともに、
①原告1名が、被相続人がそのかかっていた疾病が同法施行令所定の新潟県の区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務づけ
②原告8名が、同原告らの疾病が同区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定をすることの義務づけを
求める事案。
 
<争点>
原告ら(被相続人を含む。)の水俣病り患の有無
①水俣病の判断基準
②臨床上把握し得る主要症候が感覚障害のみの水俣病の取扱い
③いわゆる遅発性水俣病の取扱い
等 
 
<判断>
①について:
原告らがかかっている疾病が水俣病である旨の認定をするにあたっては、
感覚障害等の症候の有無、発現部位や発現時期、その原因が中枢神経の障害にあることをうたがわせる事情の有無等当該感覚障害等の症候について水俣病以外の他原因によるものであることを疑わせる事情の有無等医学的観点からの検討だけでなく、
その患者のメチル水銀曝露歴、生活歴、種々の疫学的な知見や調査の結果等の具体的事情総合的に考慮して判断すべき。 

②について:
軽度の水俣病においては、臨床所見として把握し得る主要症候が、四肢抹消優位の感覚障害のみであるものと存在するとの事実を肯定することが相当
四肢抹消優位の感覚障害は、水俣病における最も基礎的ないし中核的な症候ということができる
メチル水銀に対する曝露歴等の疫学的条件を具備する者について、メチル水銀曝露歴に相応する四肢抹消優位の感覚障害が他の原因によるものであることを疑わせる事情が認められない場合には、当該感覚障害はメチル水銀の影響によるものである蓋然性が高いというべきである。

③について:
加齢による影響を考慮することで、遅発性水俣病の機序についても医学的な説明が可能であることからすると、曝露終了後さらに長期間経過後に、老化に伴い臨床症候が顕在化することもあり得る
 
<解説>
最高裁H16.10.15:
遅発性水俣病について、「水俣病患者の中には、潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること、遅発性水俣病の患者においては、水俣湾又はその周辺海域の魚介類の摂取を中止してから4年以内に水俣病の症状が客観的に現れることなど、原審の認定した事実関係の下では、上記転居から4年を経過した時点が本件における除斥期間の起算点となるとした原審の判断も、是認し得るものということができる。」

本判決は、加齢説(加齢の影響により臨床症状の顕在化の遅れを説明する見解)が「いまだ実証に至っていないものの、医学的に十分成り立つ見解であるということができる」として、曝露終了後長期間経過後(原告によっては40年以上経過)に、老化に伴い臨床症状が顕在化することがあるとして、上記最高裁判決が認めた潜伏期間を超える遅発性水俣病の存在を認めた

本判決は、前記判断基準に従って個別に検討し、
原告らのうち7名について、
①自ら阿賀野川の魚介類を摂取するか、又は阿賀野川の魚介類を窃取していた母親の胎内にいたことにより、水俣病発祥の可能性が想定できる高度のメチル水銀曝露を受けたものと認められる。
四肢末梢優位の感覚障害が一貫して真に認められること、これが被告の指摘する他原因に起因する可能性は、一般的、抽象的なものにすぎない
メチル水銀曝露に起因して感覚障害を発症したものであり、水俣病にり患したものと認められる

原告1名及び被相続人1名について、
水俣病発症の可能性が想定できる高度のメチル水銀曝露を受けたかについては疑問が残る
②四肢末梢優位の感覚障害は認められるものの、それが、被告の指摘する他原因に起因する具体的可能性が否定できずほかに水俣病り患を積極的に推認される所見が認められない
水俣病にり患したものと認めることはできない

「一般的、抽象的なものにすぎない」と指摘して、他の原因による感染の可能性を否定したものとして、乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染したかどうかが問題となった最高裁H18.6.16

判例時報2311

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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