混合組合と労働組合とチェック・オフ中止についての大阪市の不当労働行為(肯定)
大阪地裁H28.5.18
<事案>
大阪府労働委員会は、Xの行為が不当労働行為に該当する旨のZらの申立てに基づき、Z1の組合員全員を対象とするチェック・オフの再開等を命じる救済命令
⇒Xが、本件救済命令が違法であると主張して、その取消しを求めた事案。
<解説・判断>
●地公法・労組法のいずれが適用される職員であっても、労働者として団体を結成して活動することは認められており(地公法52条3項、地公労法5条)、両社がともに構成員となる労働組合(いわゆる混合組合)が存在。
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地公法は、同法の適用のある職員について労組法の適用を明示的に排除(地公法58条1項)⇒混合組合が労組法に基づき不当労働行為救済の申立てができるかどうか(労組法2条の「労働組合」に当たるかどうか)が問題。
判断:
混合組合は、労組法適用職員に関する事項については労組法上の「労働組合」に該当するが、地公法適用職員に関する事項についてはこれに該当せず、労組法に基づき労働委員会に対して救済を求めることはできない。
⇒本件救済命令のうち地公法適用職員について救済を求めた部分を取り消した。
●
労働者ないし労働組合に不利益な結果を招く使用者の行為について、使用者の不当労働行為意思の存否及び不当労働行為の成否が問題とされた場合
最高裁は、問題とされる使用者の行為が労働組合活動に与える影響、使用者が当該行為に至った経緯、その経緯における労使の交渉の内容、双方の態度、その理由の合理性等の諸般の事情を具体的かつ総合的に検討して、不当労働行為意思の存否及び不当労働行為の成否を判断。
使用者側の要求に一見合理性を有するとみられる面があっても、直ちに不当労働行為意思の存在及び支配介入の成立が否定されるものではないということができる。
判断:
①Z1に対するチェック・オフの有償化がXの収支の改善にもたらす効果が小さいのに対し、長きにわたり継続され、Z1の財政的基盤を形作ってきたチェック・オフの中止はZ1の運営に悪影響を生じさせるものであること
②Xの市長が就任以来、労働組合に対し、勤務条件の変更に関して十分な説明を行ったり、合意を得るように努力する姿勢を全く示さず、自己のブログにおいてもZ1の活動について否定的な表現を繰り返し、Xにおいてもチェック・オフに関する団体交渉に一切応じていなかった
⇒
Xによるチェック・オフの中止は、Zらの弱体化を意図してされたものと評価されてもやむを得ない
⇒不当労働行為の成立を認めた。
●
使用者は「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」については、義務的団交事項として、団体交渉に応じる義務がある。
他方、地公労法7条ただし書は、地方公営企業等の管理及び運営に関する事項(「管理運営事項」)は、団体交渉の対象とすることができないと定めているが、管理運営事項であっても、職員の勤務条件に影響を及ぼす限りは団体交渉の対象となると解されている。
判断:
①チェック・オフが団体的労使関係の運営に関する事項であり、これを行うか否かも使用者であるXにおいて処分可能な事項
⇒義務的団体交渉事項であると判断される。
②長年継続してきた便宜供与の廃止に際しては労働組合との間で誠実な交渉を行うべき。
⇒
団体交渉拒否に正当な理由があるというXの主張を認めず、不当労働行為の成立を肯定。
●
労働委員会が不当労働行為に対する救済を認容する場合に、どのような内容の救済命令を発すべきかについては、特段の規定がなく、労働委員会の裁量に委ねられている(労組法27条の12第1項)。
判断:
労働委員会が救済方法について裁量権を与えられた趣旨について、使用者による組合活動侵害行為によって生じた状態を救済命令により直接是正することにより、正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復及び確保を図るためであるとした最高裁昭和52.2.23を参照し、Xに対し、Z1にその支出した口座振替手数料相当額を支払うよう命ずることは、不当労働行為による団結権ないし組合活動の侵害状態を回復するものであり、労働委員会が救済方法にうちて有する裁量権の範囲内にある。
⇒
前記支払命令が原状回復の範囲を超えており、労働委員会の裁量を逸脱しているというXの主張を排斥。
判例時報2307
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