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2016年12月29日 (木)

石綿粉じんばく露による健康被害についての予見可能性・損害発生・因果関係等(否定された事案)

大阪高裁H27.6.24      
 
<事案>
原告らは、被告工場で石綿粉じんにばく露したところ、胸膜プラークが存在することだけで損害が発生したと認めるべき⇒債務不履行(安全配慮義務違反)又は不法行為に基づき、損害賠償を求めた。 
 
<原審>
肺がんや中皮腫に関する知見は昭和35年以降に集積⇒X1及びX3の請求を棄却。
X2につき、胸膜プラークが存在し、閉塞性換気障害による一定の呼吸機能の低下が生じているが、喫煙によって生じた可能性が十分存在。
⇒請求棄却。 
 
<判断>
●予見可能性につき、一般的な危惧感が存在すれば足りるとの見解(「危惧感説」)を採用せず。 

●遅くとも昭和33年8月以降は、被告の従業員に3年以上の長期にわたって抑制目標限度を超える濃度の石綿粉じんが浮遊する作業場における作業を継続させることがないようにすべき義務を負う。
⇒(それ以前に退職していた)X1及びX3の請求を棄却。

● X2について: 
①日本では、胸膜プラークは石綿ばく露によってのみ発生すると考えてよいが、その存在自体によって労働能力を一部でも喪失するようなものではないこと
②胸膜プラークが、胸部X線写真では読影困難な大きさ、形状にすぎないこと
③被告工場に局所排気装置が導入され、昭和45年8月頃までに全体としては抑制目標限度以下になっていたこと、
④当該従業員が鉄工工作室に配置され、常時石綿製品の製造工程で作業に従事していたわけではないこと、
⑤ばく露開始から概ね45年が経過し、退職後35年が経過した現時点においても肺の線維化が進行しておらず、拘束性換気障害がうかがわれないこと

閉塞性換気障害の指標となるFEV1%の低下等の症状も重喫煙者であったことに起因する。
損害の発生及び因果関係を否定
 
<解説>
予見可能性について:
アスベスト製品の製造工場において長期間アスベストにばく露した従業員の家族に値する間接ばく露(家庭内ばく露)が問題となった事案につき、東京地裁H16.3.25は、「本件で検討すべき予見可能性は、石綿の家庭内暴露によって、労働者の家族が疾患を発症するなど健康を害する危険性があることについての予見可能性であるというべきであり、その予見可能性があったというためには、予見可能性を検討すべき時期において、それに関する知見があったことが必要」と判示。

大阪高裁H24.5.29は、「安全配慮義務の前提として、使用者が認識すべき予見義務の内容は、生命、健康といいう被害法益の重大性にかんがみ、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な危険があれば足り、生命、健康に対する障害の性質、程度や発症頻度まで具体的に認識する必要はない」と判示。
 
予見可能性につき、危惧感説を採用せず、昭和33年8月当時について勤続3年未満の従業員に対する安全配慮義務違反ないし不法行為の成立を否定。
胸膜プラークが存在するが、石綿関連疾患が発症したことを未だ認めるに足りない事案について損害の発生を否定したもので、その判断が最高裁によって是認されたもの。 

判例時報2309

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