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2016年12月12日 (月)

抗告人から相手方への未成年者の仮の引渡しを認めた原審を取り消し、申立てを却下した事例

東京高裁H27.2.26      
 
<事案>
相手方(原審申立人)母Bが、抗告人(原審相手方)父Aに対し、Aと暮らしている長男Cの引渡しを求めた事案。 

Bは、Cの監護者をBと定める審判とともに、Cの引渡しを求める審判前の保全処分を申し立て。
⇒原審がBの申立てを認容
⇒抗告審の本決定が、原審判を取り消し、申立てを却下。
 
<規定>
家事手続き法 第157条(婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分)
家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。以下この条及び次条において同じ。)は、次に掲げる事項についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、当該事項についての審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
一 夫婦間の協力扶助に関する処分
二 婚姻費用の分担に関する処分
三 子の監護に関する処分
四 財産の分与に関する処分
 
<原審>
①別居前のC(3歳に満たない乳幼児)の主たる監護者がBであった
②AがCを実家に連れ帰り、以後、面会交流を行うことなく監護している
③Bと離れていることのCの精神的打撃が大きいこと

Bの監護の下にCを戻すことがその福祉のために必要であって、Cの年齢等から特に早期に実現させるべき。

Bの申立てを認容 
 
<判断>
審判前の保全処分としての未成年者の引渡しを命ずる必要が認められない⇒原審判を取り消し、Bの申立てを却下。 

家事手続法157条1項が「強制執行を保全し、又はその他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき」に保全処分を命ずることができるとしている。
現在の両親の援助を受けてのAのCの監護状況に格別の問題がある状況が窺えず、Cへの急迫の危険が現在していると認めるに足りる根拠はない
 
<解説>
審判前の保全処分が認められるためには、本案審判申立てが認容される蓋然性と保全の必要性の疎明が必要。
かつて、裁判所は、主たる監護者(多くの場合母)からの申立てについて、急迫の危険を厳格には解釈せず、保全の必要性を肯定し、審判前の保全処分としての子の引渡しを認める傾向が見られた。
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近年、保全の必要性を厳格に審査し、申立てを却下する例が目立つようになっている。

東京高裁H15.1.20:
保全の必要性について「強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するための必要があるとき」との要件を充たす必要があるとし、「子に対する虐待、放任等が現にされている場合、子が相手方の監護が原因で発達遅滞や情緒不安を起こしている場合など」が具体的に該当するとした上で保全の必要性についての疎明がないとし、原審判を取り消し、申立てを却下。

東京高裁H24.10.18:
審判前の保全処分として子の引渡しを命じる場合には、家審法15条の3第7項(家事手続法115条)で準用する民保法23条2項の「著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要とするとき」との要件を要するとし、急迫の危険を厳格に解釈した上で保全の必要性を否定し、原審判を取り消し、申立てを却下。

いずれも主たる監護者であった母が父に対し、審判前の保全処分として子の引渡しを求めた事案に関するもの。

悪質な奪取事案で、保全の必要性を慎重に判断して申立てを却下した現審判を取り消し、審判前の保全処分としての子の引渡しを認めた東京高裁H20.12.18が存在。
「監護者が未成年者を監護するに至った原因が強制的な奪取又はそれに準じたものであるかどうか」を考慮要素として挙げている

奪取行為の悪質性によっては保全の必要性が緩やかに判断される余地はあると解される。
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そのような事案を除き、裁判所は、保全の必要性につき厳格に判断する傾向

判例時報2307

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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