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2016年12月 4日 (日)

配転命令の違法性と撤回後の出勤拒否の帰責事由が会社側にあるとされた事例

福井地裁H28.1.15      

<事案>
Xは、入社の約1年3か月後に福井支店から長野支店への配転命令を受け、その効力を争って、以後出勤していない。
本件は、Xが、配転命令の無効確認と、出勤しなくなってから一審口頭弁論終結時までの基本賃金及び未払の時間外賃金等の支払を求めた事案
配転命令については、訴訟係属中にYが撤回⇒Xがその無効確認の訴えを取り下げた。
 
<規定>
民法 第536条(債務者の危険負担等)
前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
 
<判断>
①賞罰規定による制裁が、その発令要件との関係で過酷にすぎ、著しく不合理。
②賞罰規定の目的は、専ら固定給の高い「M社員」を減らすという点のみにあったと認められる。
③50年近く福井市に住み続けてきたXに対し、内示もないまま長野支店への異動を命じることはX及びその家族にとって生活上著しい不利益となる。

本件配転命令は権利の濫用に該当し、違法である。 

①Yは本件配転命令を撤回したものの、その違法性は認めず、未払の時間外賃金の支払にも応じず、前記誓約書によっても「精勤」そた場合でなければ「M社員」での復職はできないとされているが、「精勤」の意味は明らかにされていない⇒それだけでは、単に本件配転命令発令直前の状態(平成25年9月のノルマ不達成により、Yにおいて、Xに対し、「S社員」への雇用条件変更又は指定する支店への異動を命じ得る状態)に服するだけであるとも解され、Xは、復職しても直ちに「S社員」への実質的降格を促され又は命じられるおそれがあり、仮に、Yにおいて、平成25年9月のノルマ不達成の効果を否定する意向があるとしても、Xが出勤した後、その月のうちにノルマを達成しなければ、平成25年9月から10月にかけてと同様の状況に至るだけであるとみる余地も十分にある。
②Yが本件訴訟において未払の労働賃金の存在を争い続けていることからすると、Xが出勤し、時間外労働を行ったとしても、Yは主観的に適法と考える時間外労働賃金を支払うだけで、客観的に適法な賃金が支払われないおそれも十分にあるとみざるを得ない。

本件配転命令発令後、その撤回後も含めて、Xが出勤していないのはYの帰責事由によるものといえる

民法536条2項により、Yは、Xに対し、本件配転命令発令後現在までの全期間について賃金支払義務を負う
 
<解説>
本判決は、 配転命令の効力について、最高裁昭和61.7.14以後の裁判例で考慮されてきた要素のうち、Xの生活上の不利益と本件配転命令の目的を認定した上で判断。
また、会社側が配転命令を撤回したにもかかわらず、従業員のその後の出勤拒否も会社側の帰責事由によるものと判断。

判例時報2306

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