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2016年12月29日 (木)

タクシーの下限割れ運賃の届出と差止訴訟(肯定)

大阪高裁H28.6.30      
 
<規定>
行政事件訴訟法 第37条の4(差止めの訴えの要件)
差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
 
<争点>
①差止訴訟の訴訟要件を満たすか
②本案について、公定幅の設定、それに基づく運賃変更命令、事業許可取消処分等が裁量濫用になるか 
 
<解説>
●差止訴訟の許容性の基準(行訴法37条の4第1項) :
積極要件:
①処分がなされる蓋然性の存在
②重大な損害を生ずるおそれ
消去要件:
③補充性(その損害を避けるため他に適当な方法があるときではないこと)
②の基準について

最高裁H24.2.9:
国旗起立国歌斉唱等に係る職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止め訴訟において
「処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する」

<判断>
差止訴訟の訴訟要件の点:
運賃変更命令⇒認める
輸送施設使用停止命令①⇒認めない
輸送施設使用停止命令②⇒原審は認めたが、本判決は否定 

本案について:
公定幅運賃を定めるに際し、標準事業者を基準とするという国の見解に対し、いわゆる下限割れで営業していた業者にもすべて公定幅の範囲内の運賃設定を強制する点で、考慮すべき事項を考慮していない
裁量権濫用。 

●立法者は、下限割れ運賃事業者を抑圧することを目的に公定幅運賃制度を工夫⇒そのような考慮事項は見いだせる条文はなさそう。
判決は、実質的には、下限割れ運賃事業者の営業の自由を侵害しないために裁量濫用の手法を活用。 

判例時報2309

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