別荘地の管理契約の解除・死亡による当然終了(否定)
東京高裁H28.1.19
<規定>
民法 第651条(委任の解除)
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
民法 第653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
<争点>
別荘地の管理契約を、個別の別荘地所有者が、民法651条の規定によって解除できるか?
個別別荘地所有者の死亡により、民法653条の規定によって、契約が当然終了するかどうか?
<解説・判断>
●東京高裁H22.2.16判決:
別荘地の管理契約の法的性質は、個別別荘地所有者が管理会社に個別の別荘地の管理(個別管理)及び別荘地全体の維持管理(全体管理)を委託する準委任契約。
民法651条で解除可能、死亡により当然終了する。
●東京地裁H24.7.27:
被告ら(別荘所有者)が締結した管理委託契約においては、所有者が別荘地であり続ける限り、更生会社(管理会社)が行う維持管理を享受し続け、かつその対価を支払い続けることが当然含意されるとともに、被告らが個別かつ一方的に所有地の別荘地としての性格を放棄することは排除されていた。
⇒管理委託契約では、土地所有者から一方的に解約することができないことが合意されていたものと解するのが相当。
本判決:
管理会社所有の公共施設(道路、公園、排水施設、ごみ集積所、防災・防火施設、センター施設等)を全別荘地所有者に利用させる利用契約と、個別別荘地所有者が管理会社の個別の別荘地の管理(個別管理)及び別荘地全体の維持管理(全体管理)を委託する準委任契約との混合契約。
⇒民法651条の適用があるとは直ちには言えなくなる。
契約当事者の意思解釈の手法:
①別荘地分譲契約におけるダイヤランド権利契約の締結強制
②別荘地所有者全員に管理費の支払義務を課し、それを原資にして全別荘地所有者に共通の不可分的な内容の全体管理を行う仕組みの採用
③別荘地を売却する場合の買受人への契約承継義務の設定
④被上告人による役務の提供の外に被上告人所有の公共施設を利用させる契約であるため、契約の一方当事者として、被上告人を外すことはできない。
を認定
⇒
個別の別荘地所有者には、民法651条による解除をすることが許されていない旨の解釈。
●
別荘地管理契約は、別荘地所有者全員に管理費の支払義務を課し、それを原資にして全別荘所有者に共通の不可分的な内容の全体管理を行う仕組みを採用した契約。
⇒個人間の信頼関係を保護する委任の規定の適用はない。
⇒委任者の死亡による当然終了を規定する民法653条の適用もない。
判例時報2308
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