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2016年12月20日 (火)

国内の旅行会社の訪日旅行ツアーを主催する海外旅行会社に対する取引の輸出免税取引該当性(否定)

東京地裁H28.2.24      
 
<事案>
旅行業等を目的とするX社が、平成22年6月1日から平成23年5月31日までの課税期間分の消費税等について、海外から我が国に来訪する旅行者に向けた企画旅行を主催する海外の会社との間で、本件訪日ツアーのうち国内の旅行に係る部分についてした取引は、消費税法7条1項の規定により消費税が免除される取引に当たるとして、更正すべき理由がない旨の通知に係る処分の取消しを求める事案。
 
<解説・判断>
消費税法4条1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には消費税を課する旨規定し、同法7条1項は、本邦からの輸出として行われる資産の譲渡等について、消費税を免除する旨を規定。

国外で消費される輸出品等について、源泉地国の消費税を免除され、仕向け地国の消費税を課されることにより、消費税の負担に関する限り、仕向地国および他の国々の製品と同じ条件で競争し得ることとなり、税制の国際的中立性を確保する趣旨。

同項5号、同法施行令17条2項7号の規定によれば、非居住者に対して行われる役務の提供のうち、「国内における飲食又は宿泊」(同号ロ)又はこれに「準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの」(同号ハ)以外のものは、輸出免除取引に該当し、消費税が免除される。
⇒本件取引が同号ロ、ハに該当するか否かが問題。

本判決:
消費税の課税の趣旨及び前記の免除の趣旨等

役務の提供が同号ロ、ハにより輸出免税取引から除外されるか否かを判断する基準として、当該役務の提供によってもたらされる便益が国境をまたがずに国内において直接享受されて完結するものであるか否かによって判断すべき。

本件取引(本件訪日ツアーのうち国内の旅行に係る部分)の性質、内容が、X社において、本件海外旅行会社に対し、レストラン、ホテルその他の各種サービス機関をして、海外から来訪する本件旅行者に対して、国内における飲食、宿泊、運送、観光、案内等の各種サービスを提供させるという役務を提供することを内容とするもの。

本件取引の性質、内容に照らし、本件取引は、いずれも国内において直接消費されて完結するもの⇒輸出免税取引に該当しない


仮に本件取引が輸出免税取引に該当⇒X社は、本件海外旅行会社から、本件各種サービス提供機関の代金とし消費税込み代金の支払を受け、これを本件各種サービス提供機関に支払った後、その消費税分の金員について還付を受けることとなる。⇒消費税の支払として授受されたはずの当該金員がX社に滞留することになるという問題も生じる。 

判例時報2308

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