日本語の翻訳文が添付されていない呼出状等の送達と民訴法118条2号の送達要件(肯定された事案)
東京高裁H27.9.24
<事案>
外国裁判所の判決について執行判決を出すか否かが問題となった事案。
カリフォルニア州の裁判所に対し、損害賠償請求訴訟を提起。
カリフォルニア州登録送達人は、Yに対し、カリフォルニア州の住所において、本件外国訴訟の呼出状、訴状等を直接送達。
15万6947米ドルを支払うよう命じる判決が確定⇒Yが日本に帰国⇒Xは、Yに対し、民執法24条に基づき、本件外国判決についての執行判決を求めた。
<規定>
民執法 第24条(外国裁判所の判決の執行判決)
外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。
3 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。
民訴法 第118条(外国裁判所の確定判決の効力)
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
<争点>
「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」を受けたと言えるか否か。
⇒日本語の翻訳文が添付されていなければならないか?
<解説・判断>
●最高裁H10.4.28:
「民訴法118条2号所定の「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」は、我が国の民訴手続に関する法令の規定に従ったものであることを要しないが、被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ、かつ、その防御権の行使に支障がないものでなければならない」と判示。
<一審>
①Yの語学力や国際的活動の程度によって翻訳文添付の要否を判断することは結論を不安定にするため相当とは言い難い
②Yは、米国に在留していたものの、日常会話以上の語学能力、特に文章の理解力、読解力が備わっていたのかは疑問
⇒民訴法118条2号所定の要件を欠いていた
⇒Xの請求を棄却
<判断>
①Yは、米国において、語学学校に通い、その間、就労し、音楽活動をするなど、英語を用いてコミュニケーションを図る能力を有しており、英語によるある程度の表現能力を有していた
②本件外国訴訟提起前のAIU保険との間における本件事故の補償をめぐっての交渉過程において、XがYに対してその責任を追及するような素振りがなかったとしても、Yは、本件送達により受領した送達書類によって、本件外国訴訟の訴状がXとの間の本件事故に関する書類であることを認識したと認められる
⇒民訴法118条2号の要件を満たしている。
本判決は、被告の語学能力等を個別に検討して判断する考え方に立って、Yに了知・防御可能性があったと判断。
判例時報2306
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