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2016年11月15日 (火)

石綿粉じんばく露について、国賠請求と企業の責任が認められた事例

京都地裁H28.1.29      
 
<事案>
建設作業に従事していた際に石綿粉じんに曝露したため、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患に罹患したと主張する検察作業従事者及びその相続人である原告ら27名が、国及び石綿含有建材を製造、販売していた企業(32社)に対して損害賠償請求。 

対国:
安衛法や建基法に基づき建設作業現場における石綿粉じんばく露を防止するための規制権限を行使すべきところをこれを怠った⇒国賠法1条1項に基づく損害賠償請求。

対企業:
石綿含有建材を製造販売してはならない注意義務に違反⇒民法719条等に基づき損害賠償請求。
 
<規定>
民法 第719条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
 
<判断>
●国の責任 
規制権限不行使の違法性の判断基準:
「不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるか」に求め、旧労基法、安衛法に基づく国の規制権限につき、「できる限り速やかに、技術の進歩や最新の医学的知見に適合したものに改正すべく、適時にかつ適切に行使されるべきもの」として、筑豊じん肺訴訟上告審等の最高裁判例を踏襲するとともに、石綿関連疾患に関する医学的知見の確立時期を泉南アスベスト訴訟上告審と同時期とした。

先行判決と異なり、建設作業による石綿関連疾患罹患の危険性、予見可能性の判断を、建設作業現場における石綿粉じん濃度の測定結果と各時期における粉じん濃度規制との比較により行い、屋内作業のみならず、建設作業現場については屋外作業の危険性、予見可能性も認めた

個別の規制権限不行使について:
先行判決と同様、国の規制の実効性について検討し、防じんマスク又は送気マスクの着用、集じん機付き電動工具の使用並びに建材及び建設作業現場への具体的な警告表示の義務づけを怠った点に旧労基法、安衛法上の規制権限不行使がある⇒違法性を肯定。
労基法上の労働者に該当しない一人親方等は安全衛生法による保護対象でない⇒違法性を否定。
建設作業従事者は健基法の保護対象でない⇒健基法に基づく規制権限不行使の違法性を否定。

因果関係:
国が責任を負わない期間にも石綿粉じんに曝露したことによって、直ちに因果関係が否定されるものではない

●企業らの責任 
企業が国と同様の時期に建材への具体的な警告表示を行うべきであったにもかかわらずこれを怠ったと過失を肯定

企業の過失と結果との因果関係を、民法719条1項後段類推適用により肯定。

本件が民法719条1項後段の典型的な択一的競合とは異なり、その類推適用としての累積的競合又は重合的競合の場合であるとした上、
その適用には各企業の石綿含有建材の製造、販売が被災者への到達可能性を有する加害行為である必要があるとする一方、択一的競合の場合と異なる累積的競合及び重合的競合においては、選択された加害行為者以外に加害行為者がいないことの立証は不要であるが、企業は他原因を主張立証することで減責を求めうる

一定以上のシェアを有する企業により販売され、販売の時期等判事の要素が、各被災者の就労実態に合致する建材であれば、各被災者への到達可能性を有するとして、一部の建材の製造、販売に加害行為性を認めた

判例時報2305

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