退院の際の医師の説明義務違反⇒自己決定権侵害⇒不法行為責任(肯定)
大阪高裁H27.11.11
<事実>
Aの遺族であるXらは、Yの経営するB病院に入院中、重大な疾患を有している可能性が高い状況にあることを認識していたにもかかわらず、その旨説明することなく、必要な検査を実施することもないままAを退院させたうえ、再入院以降においても適切な検査を行わなかったなどと主張⇒Yに対して、診療契約上の債務不履行ないし使用者責任に基づき損害賠償請求。
<原審>
Yに診療契約上の債務不履行に該当するとは認められない。
B病院の医師は、Aが退院するにあたり、Aの症状が重大な疾患による可能性があり、これを鑑別するための検査が予定されていることを伝えず、これを放置した場合の危険性について説明するどころか、前記可能性や危険性がないかのような誤った情報を提供。
⇒Aの自己決定権を侵害する不法行為に該当する。
<判断>
原判決を肯定。
<解説>
患者の自己決定権という概念は、憲法13条の規定中の包括的基本権の一環として位置づけられ、専門家である医師から十分な情報提供をわかりやすい説明を受け、自らの納得と自由な意思に基づき自分への医療行為に同意し、選択し、あるいは拒否する権利。
判例時報2304
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