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2016年11月21日 (月)

外国国家発行の円建て債に係る償還等請求訴訟において、当該債券の管理会社の任意的訴訟担当としての原告適格(肯定)

最高裁H28.6.2      
 
<事案>
いずれも銀行であるXらが、Y(アルゼンチン共和国)が発行した円建て債券を保有する債権者らから訴訟追行権を授与された訴訟担当者であるなどと主張して、Yに対し、当該債券の償還及び約定利息等の支払を求める事案。
 
<争点>
任意訴訟担当としての原告適格の有無 
 
<解説・判断>

社債については、旧商法297条以下で、社債管理会社による社債管理制度が設けられ、同法309条に基づき社債管理会社に訴訟追行権が認められていた。
but
外国国家が発行するいわゆるソブリン債については、社債に関する旧商法の規定の適用がない⇒任意訴訟担当の可否が問題。 

任意的訴訟担当:本来の権利主体が訴訟追行権を第三者に授与し、第三者がその授権に基づいて当事者適格を取得する場合


最高裁昭和45.11.11:
民法上の組合の業務執行組合員の原告適格についての従前の判例を変更したもの。

任意的訴訟担当については、本来の権利主体からの訴訟追行権の授与があることを前提として(前提要件)、弁護士代理の原則を回避し、又は訴訟信託の禁止を潜脱するおそれがなく(第1要件)、かつ、これを認める合理的必要性がある(第2要件)場合には許容することができるとしたもの。 

裁判例での、一般的な傾向としては、これをも認めることに慎重なものが多い。


学説:
①「訴訟担当者のための任意的訴訟担当」と②「権利主体のための訴訟担当」に分類し、①については、訴訟担当者に固有の利益が認められれば比較的緩やかにこれを肯定し、②については、訴訟担当者が権利関係に現実に密接な関与をしていることを要求して比較的厳格な要件の下でこれを肯定。
but
学説による議論の対象は、労働者の権利を行使する場合における労働組合の執行組合員や、不動産賃貸人の権利を行使する場合における不動産管理人などが中心。
 
<原審>
前提条件につき、 本来の権利主体による訴訟追行権の授与があったとは認められない。

第二要件につき、任意的訴訟担当を認める合理的必要性があったとは認められない。

任意的訴訟担当としての原告適格を認めず、本件訴えを不適法として却下。
 
<判断>
Xらが原告適格を有することを認め、原判決を破棄するなどして、一審に差し戻した。
 
●訴訟追行権の授与の有無(前提要件)
発行体であるYを委託者、Xらを管理者として、本件債券につき本件管理委託契約が締結されており、その効果が本件債券等保有者に及ぶか?

第三者のためにする契約⇒(黙示の)受益の意思表示の有無の問題。

一審・原審は否定

①判決効が本来の権利主体に及ぶため、Xらが敗訴した場合には本件債券等保有者が権利を失う
②本件授権条j校の文言が抽象的
(⇒本件債券等保有者が具体的な訴訟追行の可能性を理解した上で本件債券を譲り受けたとは推認しがたい)

本件判断は肯定

多数の公衆に販売されるという本件債券と社債の類似性に着目し、債権者の合理的意思を推認した上、本件授権条項の記載が目論見書等にも記載されていることから、債権者が本件債券を購入した際にこれを受け入れたものと認めることが相当であるとして、黙示の受益の意思表示を認めた

本件授権条項を含む本件要項は、不特定多数の者を相手に、交渉による変更を予定していない画一的・集団的な法律関係を構築するために作成されたものであり、約款と類似する性質を有していると見ることができ、そのような性質を踏まえたものと思われる。


授権を前提とする任意的訴訟担当の許否について:

本判決:
債券の管理会社に対して訴訟追行権を授与する仕組みが、社債と本件債券の類似性に鑑み、社債管理会社の制度に倣って設けられたものであることを指摘。

法定された社債管理の仕組みと類似した仕組みが採用されていることは、当該仕組みの必要性及びその合理性を裏付ける重要な事情であると位置づけ。

受任者であるXらが銀行として法令上種々の監督・規制に服することや、本件管理委託契約に基づき債権者に対し公平忠実義務及び善管注意義務を負うことなどの事情を指摘。

Xらの訴訟追行者としての適格性ないし期待可能性に着目したもの。

Yからは、Xらが、Yの依頼に基づきエクスチェンジオファー(支払の繰り延べ等をするために、新たに発行する債券との交換の申し出)の事務を取り扱った⇒Xらと本件債券等保有者との間に利益相反関係が生じている旨の指摘。

本判決:
「抽象的には利益相反関係が生ずるおそれがあることを考慮しても」Xらに善管注意義務等が課されている等の事情に照らし、Xらによる適切な訴訟追行は阻害されないと判断。

判例時報2306

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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