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2016年11月13日 (日)

テレビ番組による名誉毀損が否定された事例(最高裁)

最高裁H28.1.21   

<事案>
本件番組に出演したXが、本件番組中のX及びその父親に関連する内容を含む放送によりXの名誉が毀損されたなどと主張し、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償を求める事案。

<一審>
本件番組の放送により、Xの社会的評価は低下しない⇒Xの請求を棄却 

<原審>
「人間動物園」という言葉は差別的な意味合いを有している
⇒Yは、本件番組によって、Xの父親はパイワン族を代表して英国に行ったというXの思いを踏みにじり、侮辱するとともに、パイワン族を代表して英国に行った人の娘であるというXがパイワン族の中で受けていた社会的評価を低下させ、その名誉を侵害した
⇒Xの請求を一部認容。

<判断>
テレビ番組を視聴した一般の視聴者において、日本が、約100年前に、台湾当地の成果を世界に示す目的で、西欧列強が野蛮で劣った植民地の人間を文明化させていると宣伝するために行っていた「人間動物園」と呼ばれる見せ物をまねて、Xの父親を含む台湾の一民族を、英国で開催された博覧会に連れて行き、その暮らしぶりを展示するという差別的な取扱いをしたという事実を摘示するものと理解するのが通常
⇒本件番組は、Xの名誉を毀損するものではないと判示して、Xの請求を棄却。 

<解説>

名誉毀損とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させる行為(最高裁)。

テレビジョン放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべき(最高裁)。
テレビジョン放送がされた番組によって摘示された事実がどのようなものであるかという点についても、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断するのが相当であると判示。

本件番組の内容を全体としてみた場合、Xの父親やX自身の人格的価値に関連付けて「人間動物園」という表現を用いていると解することは困難であって、むしろ、一般の視聴者は、本件番組は当時の日本政府の姿勢を批判しようとした番組であると受け止めるものと解するのが素直。
本件番組の放送によりXの社会的評価が低下するとはいえず、本件番組は、Xの名誉を毀損するものではない。、


上告受理決定において排除されているが、Yの上告受理申立て理由には、原審の準拠法の誤りを指摘する部分がある。 

法の適用に関する通則法 第19条(名誉又は信用の毀損の特例)
第十七条の規定にかかわらず、他人の名誉又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、被害者の常居所地法(被害者が法人その他の社団又は財団である場合にあっては、その主たる事業所の所在地の法)による。

法の適用に関する通則法第22条(不法行為についての公序による制限)
不法行為について外国法によるべき場合において、当該外国法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは、当該外国法に基づく損害賠償その他の処分の請求は、することができない

本件は名誉毀損の事案であるところ、法の適用に関する通則法19条により、その準拠法は被害者であるXの常居所地法である台湾法とされ、また、同法22条1項により、台湾法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは台湾法に基づく損害賠償その他の処分の請求はすることができない。

本件で損害賠償請求が認められるためには、日本法及び台湾法のいずれにおいても名誉棄損に基づく不法行為が成立しなければならないのに、原審は準拠法について検討を欠いている。

最高裁は、日本法において名誉毀損が成立しないと考える以上、前記の点について判示する必要はないとしたもの

判例時報2305

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