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2016年11月14日 (月)

医師による虚偽の診断及び診断録等の開示請求の一部拒絶についての損害賠償請求(肯定)

東京地裁H27.8.19      
 
<事案>
Xが、他の病院でセカンドオピニオンを得た結果、Yによる診断(性器クラミジア感染症及び性器ヘルペスの診断)がいずれも虚偽であったことが判明⇒代理人を通じて再三にわたり診療録等の開示を請求⇒診療録等の一部が開示されたのみで、残部の開示は拒否⇒Yに対して債務不履行又は不法行為に基づき、治療費及び慰謝料等の損害の賠償請求。
 
<争点>
①虚偽の診断に基づく詐欺及び傷害
② 診療録等の開示拒否
③損害
 
<規定>
医師法 第24条〔診療録の記載及び保存〕
医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

民法 第656条(準委任)
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

民法 第645条(受任者による報告)
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
 
<判断・解説>
●争点①について 
Xは性器クラミジア感染症及び性器ヘルペスと診断する根拠なし⇒YがXを性器クラミジア感染症及び性器ヘルペスと診断したことは、確立された医学的知見に照らして不合理。
検査会社の検査報告書及び検査キットの添付文書では、性器クラミジア感染症の血清抗体検査において疑陽性と陰性の境界となるカットオフインデックスが0.90と記載されているにもかかわらず、Yがこれを0.00に改変した検査報告書を自ら作成してXに交付しており、他の患者にも同様の診断を繰り返していた
⇒Yによる検査、診断及び治療という一連の医療行為については、その全てが、医師が診療契約に基づいて尽くすべき最善の注意義務に著しく違反するもので、故意による詐欺行為と評価することができるもの。

医師の尽くすべき「最善の注意義務」について、最高裁は、「右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である」と判示。
⇒医療訴訟においては、確立された医学的知見によって構成される医療水準が、医師の過失について判断する基準。

●争点②について 
医師が診療の度に逐一記載する診療録(医師法24条1項)は、医師だけでなく患者にとっても診療経過を検討する上で最も重要な客観的資料

医師は、患者から診療録等の開示を請求されたときは、これを開示することが患者の心身に悪影響を及ぼすなどの特段の事情のない限り、診療契約に基づく債務の一内容として、患者に対して診療録等をすみやかに開示すべき義務を負っている。

残部の開示がXの心身に悪影響を及ぼすなどの特段の事情は見受けられない⇒Yは、診療契約に基づく債務の一内容として、Xの請求に応じて未開示の診療録等を速やかに開示すべき義務を負っていた。

診療契約の法的性質は準委任契約⇒受任者である医師は、委任者である患者に対し、医療行為が終了した後に、その顛末について報告すべき義務を負っているところ(民法656条、645条)、その報告に当たっては必ずしも診療録等を開示する必要まではないものの、少なくとも患者が医師による医療行為の当否に疑問を抱くような事情があり、診療経過について検討するために診療録等の開示を請求している場合には、医師がこれを開示すべき義務を負うことがあり得る。

●争点③について 
Yによる一連の医療行為に係る治療費、他の病院でセカンドオピニオンを得るのに要した治療費等のほか、
虚偽の診断に係る医療費として30万円
診療録等の開示拒否に係る医療費として10万円
を、Yによる虚偽の診断及び診療録等の開示拒否によってXに生じた損害と認めた。

判例時報2305

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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