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2016年11月23日 (水)

詐欺行為に関与した会社やその取締役として登記されたいた者への損害賠償請求

大阪地裁H28.1.13      
 
<事案>
Xは、前記社債購入代金の振込口座名義人である被告A(法人)及びその代表取締役として登記されている被告Y1に加え、被告Aを新設分割による設立した被告B、その代表取締役として登記されている被告Y2並びに取締役として登記されている被告Y3及び被告Y4に対して、共同不法行為に基づく損害賠償を求めるとともに、被告Y1、Y2、Y3及びY4については、取締役としての任務懈怠責任(会社法429条1項)に基づく損害賠償を求めた。 
 
<規定>
会社法 第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

会社法 第908条(登記の効力)
この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
 
<判断>
●被告A及びその取締役らの責任

被告Aの設立の際に法務局に提出された被告Y1名義の「会社分割による株式会社設立登記申請書」について、被告Y1が闇金から金銭を借り入れるに当たって闇金にいわれるままに白紙の実印のみを押印して印鑑登録証明書と併せて交付したものを、何者かが偽造したもの
⇒その設立手続には看過し難い重大な瑕疵がある
⇒その設立を無効と認定し、被告Aに対する訴えについては、実在しない者を相手方とするものとして却下

被告Y1について、会社法908条2項の類推適用による任務懈怠責任を肯定する余地はあるとしながらも、同被告が代表取締役への就任を承諾したとはいえないことから、不実の登記に加功したとまではいえない⇒任務懈怠責任を否定

原告側は、仮に、闇金に実印を押印した白紙と印鑑登録証明書を交付したとしても、詐欺についての過失の幇助行為であると主張。
but
被告Y1が交付した文書が会社分割に利用され、その新設会社名義の預金口座が詐欺に利用されることについての具体的な予見可能性があったとは認められないその幇助者としての不法行為責任を否定
 
●被告B及びその取締役らの責任 

被告B及びその代表取締役として登記されていた被告Y2(いずれも公示送達)に関しては、内容虚偽の分割計画書に基づいて被告Aを新設分割により設立⇒分割手続自体に実体がなかったと認定。

被告Bについては過失による幇助責任(不法行為責任)を
被告Y2については任務懈怠責任を
それぞれ肯定。

被告Bの取締役として登記された被告Y3:
同被告が休眠会社の売買を業とする会社の従業員であり、会社を作るための人数合わせのために実印と印鑑登録証明書発行のためのカード等を勤務先会社に預けていたところ、これが利用されて、被告Bの取締役に登記されたもの。

被告Bの取締役として選任された者ではなく、そのような認識もなかった⇒不実の登記作出に加功したということはできない⇒任務懈怠責任を否定

過失による幇助責任については、被告Y3が被告Bの取締役として就任登記に関与しなかったとしても、被告Aの新設分割は可能であった⇒幇助行為に該当しない⇒同責任を否定。

被告Bの取締役として登記されていた被告Y4:
被告Bの取締役として登記されていることを認識していた上、Xに対する詐欺行為が行われる直前まで、社債発行会社とされていたDの取締役として登記されており、その当時、既に詐欺行為の準備行為がなされていたもpのと考えられる

会社法908条2項の類推適用による任務懈怠責任及び過失による幇助責任のいずれも肯定。
 
<解説>
本件のような劇場型の特殊詐欺の事案では、送達に難航する被告が多く、送達が奏功し、応訴がなされた被告については、詐欺行為との関連性が薄く、取締役として登記されているだけの名目的取締役にすぎないとの主張がなされることも多い。

また、会社自体、実体がないことも多く、取締役として騰貴されている者についても、会社法所定の選任手続がとられたことが全く窺えないこともある。

このような場合には、会社法429条1項に基づく責任を直接問うことは難しく、同法908条2項の類推適用(最高裁昭和47.6.15)の可否が問題となる。

いかなる場合に不実の登記の作出に加功したということができるかについては事案ごとの判断となる。

本判決は、取締役として登記されていた名目的取締役の責任について、登記されるに至った事情を個別に認定した上で、それぞれの責任を判断

判例時報2306

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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