行政事件の取消訴訟で出訴期間を徒過したとされた事例
最高裁H28.3.10
<事案>
Xが、京都府個人情報保護条例12条に基づき、実施機関である京都府警察本部長に対し、公文書の記載されている個人情報の開示請求⇒平成24年10月12日付で処分行政庁から一部開示決定⇒Y(京都府)を相手に、本件処分のうち不開示部分の取消しを求めるとともに、同不開示部分の情報を開示することの義務付けを求める。
平成24年10月12日に本件処分、
同月15日に、同処分に係る通知書がX代理人弁護士の下に到達。
同月22日、本件処分に係る開示文書の写しがX代理人弁護士の下に到達。
平成25年4月19日に本件訴えを提起。
⇒行訴法14条1項の出訴期間の遵守が問題。
<規定>
行政事件訴訟法 第14条(出訴期間)
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
行政事件訴訟法 第37条の3
第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
<1審>
本件取消の訴えについて、
①行訴法14条1項本文の出訴期間を経過して提起。「正当な理由」なし。
⇒却下
本件義務付けの訴えについて、本件取消しの訴えが不適法⇒行訴訟37条の3第1項各号に定める要件のいずれをも満たさない⇒却下。
<原審>
本件取消の訴えについて:
①本件処分に係る本件通知書には、開示の日時・場所は郵送によると記載され、本件通知書の記載だけでは不開示の内容は不明であり、本件各開示文書(写し)の到達を待たねばならなかったこと
②本件条例15条2項には、実施機関は、開示決定等をしたときは、その開示決定等の内容を当該開示請求者に書面により通知しなければならない旨規定
⇒
本件通知書と開示文書が一体となって、本件処分の通知内容を構成していると解するのが相当。
⇒
Xが本件処分の存在を現実に知った日は、平成24年10月22日であり、出訴機関の遵守においては適法。
本件義務付けの訴えについても、本件取消しの訴えが不適法なものであることを前提として不適法であるとすることはできない。
⇒一審判決を取消し、本件を一審に差し戻すべきもの。
Yが上告受理申立て
<判断>
本件通知書に、本件開示請求に対する応答として一部を開示するものである旨明示され、不開示とされた部分を特定してその理由が示されているという事情
⇒本件通知書が到達してから6か月を経過して提起された本件取消しの訴えは、当該決定に係る個人情報の開示が実施された日から6か月以内に提起されたものであるとしても、行訴法14条1項本文の定める出訴期間を経過した後に提起されたもの。
①本件通知書において出訴期間の教示がなされていること、②本件通知書の記載は不開示部分を特定して不開示の理由を付したものであること、③本件通知書がXを代理する弁護士の下に到達した一週間後に本件処分に係る個人情報の開示が実施されたことなどの事情
⇒
本件取消しの訴えが出訴期間を経過した後に提起されたことにつき、行訴法14条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえない。
⇒原判決を破棄し、控訴を棄却。
判例時報2306
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