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2016年10月17日 (月)

「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件と判断の裁量

京都地裁H27.11.6       
 
<事案> 
中華人民共和国の国籍を有し、「特定活動」の在留資格で本邦に在留していたX(女性)が、「日本人の配偶者等」の在留資格への変更申請⇒日本人との婚姻関係の実体がないとして不許可処分(「本件不許可処分」)
その後、退去強制手続において、出入国管理及び難民認定法(「入管法」) 49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決(「本件裁決」)を受け、退去強制令書の発付(「本件退令発付処分」)

本件不許可処分、本件裁決及び本件退令発付処分がそれぞれ違法であるとして、その各取消しを求めた。
 
<判断>
最高裁H14.10.17:
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには、単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があるというだけでは足りず、当該外国人が本邦において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要し、日本人との婚姻の届出をした外国人であっても、両者の間にこのような特別な関係があるとはいえない場合、すなわち、社会生活上婚姻関係といえるような実質的基礎を欠いている場合には、その者の活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということはできないと解すべきである(活動要件必要説)。 

XとBは別居していたが、ラインやメールのやり取り等からすれば、同人らの関係は、真摯な意思をもって共同生活を営むものであり、社会生活上婚姻関係といえるような実質的基礎を欠いているとはいえない
本件不許可処分は、裁量の範囲を逸脱し、又は、その濫用があったものとして違法

在留特別許可をしないでされた本件裁決は、裁量権が広範であることを前提としても社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであるとして違法。
 
<解説> 
●外国人が本邦に上陸し在留するには、在留資格を有することが必要であり(入管法2条の2)、在留資格の種類は、入管法別表に掲げられている。 

●「日本人の配偶者等」としての活動要件を充たすにはどのような活動が必要か?

行政解釈では、配偶者としての活動は「社会通念上夫婦として共同生活を営むこと」であるとされている。

本判決:
「日本人の配偶者等」で必要とされる活動要件は、外国人と日本人との婚姻関係が実体を伴う限り充足しており、活動要件を充足するために特別な活動が求められることはなく、婚姻概念が多様化している今日、「同居」のみを特別扱いするのは相当ではなく、同居の有無も婚姻関係に実態があるか否かを判断する一要素にすぎない
XとBには、努力すれば完全に同居できていた可能性はあるものの、別居状態であったとしても、判示の事情を考慮して、XとBとの間には婚姻関係の実体が認められる
 
在留資格変更許可申請不許可処分が違法と判断された場合、その後に続く退去強制手続きにおける処分が当然に違法となるか(=違法性の承継があるか)? 

本判決:
現行法上在留資格変更手続と退去強制手続とは、その判断機関や処分要件等において全く別個の手続として構成されている
両者間には、同一の行政目的を追求する手段と結果として位置づけられ両者が相まって1つの効果を完成させる関係があるとは考えられない
本件不許可処分の違法性が本件裁決に承継されることはない

判例時報2303

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