国が行う国有林分収育林契約と説明義務違反(肯定)
大阪高裁H28.2.29
<事案>
国有林野に生育している樹木の共有持ち分を譲渡し、その者から持分の対価及び当該樹木についてY(国)が行う保有及び管理に要する費用の一部の支払を受け、育林による収益をYと費用負担者が分収するという保険分収育林制度に関し、Yと分収育林契約を締結し、1口50万柄を出資。
⇒Yの担当者の違法な勧誘によって分収育林契約を締結し、出資金に相当する損害を被った等と主張し、国賠法1条1項に基づき損害賠償を請求。
<判断>
分収育林契約を締結する費用負担者は、通常は、損益にかかわらず国有林野の整備に貢献しようとするのではなく、国有林野の整備に寄与しつつ、一方では何らかの収益を得られる投資目的で契約を締結しようとしたものと推認することができる。
⇒
元本割れリスクの有無は費用負担者にとって契約締結の重要な考慮要素に当たり、この点に関する費用負担者の利益を保護する必要がある。
Yは分収育林契約の締結に当たり、元本割れリスクについて説明しなかった⇒Yの損害賠償責任を肯定
分収育林契約には元本割れリスクがないと信じたことに過失相殺をする程の落ち度があるとはいえない。
⇒過失相殺を否定。
<解説>
金融商品取引については、事業者は顧客に対し、金融商品取引契約の概要等を説明すべき義務を負うが(金商法37条の3参照)、その説明義務の範囲・程度は、商品の性格、危険性の程度、社会への浸透度、周知度、勧誘の態様、顧客の職業、年齢、財産状態、投資経験、購入目的等を総合的に判断して個別具体的に決定される。
本判決は、本件分収育林契約は投資目的て締結されたものであると推認できるとした上で、金融商品取引と同様、Yに元本割れリスクの説明義務違反を認めたもの。
判例時報2303
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