抗告訴訟の対象となる行政処分・支給対象事業主に該当することの確認と確認の利益
東京地裁H27.12.15
<事案>
障害者を雇用する事業者であるXが、独立行政法人高齢・障害・休職者雇用支援機構法に基づき設立された独立行政法人であるYに対し、Yの定める障害者雇用納付金関係助成金支給要領に基づき、障害者の雇用の促進等に関する法律49条1項5号及び障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則20条の3の定める重度障害者等用住宅の賃借助成金の受給資格の認定申請
⇒
Yから、本件申請に係るXの本件助成金の受給資格は認定できない旨の決定
⇒
①主位的には、本件不認定決定が抗告訴訟の対象となる処分に当たることを前提として、本件不認定決定の取消し及び本件申請に係る本件助成金の受給資格を認定する旨の決定の義務付けを
②予備的には、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、Xが本件申請に係る本件助成金の支給につき、支給対象事業主であることの確認を求める事案
<争点>
①本件助成金の受給資格に係る認定又は不認定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分に当たるか
②本件確認の訴えには、確認の利益があるか
③Xは、本件助成金の支給対象事業主に当たるか
<判断>
●
①法、施行規則及び本件告示は、本件助成金の支給手続について何ら具体的な定めも置いておらず、②本件助成金の受給資格の認定は、専らYの定める本件支給要領において規定された手続にすぎない
⇒
本件助成金の受給資格に係る認定又は不認定の決定は抗告訴訟の対象となる処分には当たらない
⇒
本件不認定決定の取消し及び本件申請に係る本件助成金の受給資格を認定する旨の決定の義務付けを求める訴えを却下。
●
本件助成金の受給資格の認定申請をした事業主が受給資格の認定がされるべき事業主に当たるか否かは当該事業主の法律上の地位に関わる事柄
⇒本件確認の訴えについて確認の利益を肯定
Yは、本件助成金の申請をする者が支給対象事業主に該当するか否かの判断につき裁量権を有しており、Xの本件助成金支給対象事業主と認めない旨のYの判断は裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たらない
⇒本件確認の訴えを棄却
<解説>
●抗告訴訟の対象となる処分
抗告訴訟の対象となる処分とは「公権力の主体たる国又は地方公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最高裁昭和39.10.29)
本件助成金の支給のような給付行政は、本来的に非権力的な性質を有するものの、法律の仕組みから当該給付に係る行為が処分と構成されていると合理的に解釈される場合には、当該行為は処分として取り扱われるものとされている。
最高裁H15.9.4:
具体的な支給対象者、支給額、支給手続等が支給要領において定められている労働者災害補償保険法(平11法60号による改正前のもの。)23条1項2号に基づく労災就学援護費につき、その支給に関する決定は処分に当たる旨判示しているが、
本判決は、法、施行規則等の規定から、前掲の判例とは事案が異なるとして、本件助成金の受給資格の認定、不認定の地位は処分に当たらないと判断。
●助成金等の支給を受けることのできる地位(又はこれに類する地位)を有することの確認の利益
①本件助成金の支給は公益的性格を有しており、契約自由の原則が無制約に妥当するものとは解されない
②法51条1項は、一定の基準に従って本件助成金を支給すべきことを要請しており、Yとしては、本件助成金の支給につき、特段の合理的理由のない限り、関係法令等の定める支給要件等の基準と異なる取扱いをすることは許されない
⇒本件確認の訴えの確認の利益を肯定。
中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律等に基づく中小企業基盤人材確保助成金につき、その支給を受けられる地位にあることの確認の利益を認めた東京地裁H18.9.12
判例時報2302
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