中学2年が野球チームのレクレーションの海水浴中におぼれ死亡⇒損害賠償請求(否定)
大阪高裁H27.9.3
<事案>
中学2年のAが野球チームBのレクレーションの海水浴中におぼれ死亡
⇒
Aの両親X1及びX2が、
(1)当時Bの代表であったY1、副代表であったY2、保護者会会長であったY3に対しては、
①海水浴場の事前調査・確認義務の懈怠
②監督監視体制整備・現場監督監視義務の懈怠
⇒不法行為に基づき、
(2)海水浴場の監視業務を委託されていたライフセービングクラブY4に対しては、
①注意喚起義務の懈怠、
②見守り義務の懈怠、
③救助活動の不備
⇒不法行為に基づき
(3)海水浴場を開設しその管理を委託していた管理運営委員会Y5、和歌山県Y6に対しては、
海水浴場の安全性を確保するための人的設備とその運営の不備があると主張
⇒国賠法2条1項又は1条1項に基づき、
(更に、Y5に対しては、海水浴場利用契約上の債務不履行に基づき)、
損害賠償を請求。
<争点>
(1)と(2)との関係で過失の有無
(3)との関係で営造物の設置・管理の瑕疵の存否
<判断>
●(1)との関係
①(海水浴場の事前調査・確認義務の懈怠)について、①本件海水浴場は正規の海水浴場であり一応安全なものと判断される、②海水浴には常に一定の危険が伴う⇒Y1~Y3が海水浴を選定するに際し事前に調査・確認しなかったからといって、過失があるとはいえない。
②(監督監視体制整備・現場監督監視義務の懈怠)について、警告や指示を与えたり、参加者に保護者の目が届くような体制を構築したりすべきであったといえるが、
①本件海水浴場は正規の海水浴場で相当程度の監視体制を備えていたこと、②事故当時の海は穏やかで危険性が特に高まっていたわけではないこと
⇒本件海水浴が任意団体によるによる任意参加の行事
⇒Y1~Y3がBの役職者であったとしても、そのことを理由に、過失の存在を認めることはできない。
●(2)との関係
Y4には事故を未然に防止しこれに対応するための救助体制が備わっていたとした上で、
①(注意喚起義務の懈怠)については、本件海水浴場にドン深(水深が急に深くなっていること)の区域があったとしても、それ自体により格別に危険な海であるとはいえない⇒Y4がその注意喚起をしていなかったとしても、過失の存在を認めることはできない。
②(見守り義務の懈怠)については、Y4には、Aが溺れる前から救助活動を開始する義務は存在しない
③(救助活動の不備)について、Y4のライフセーバーらがAを救助する過程の中で不手際は存在しない。
⇒
過失否定。
●(3)との関係
①海水浴場も公の営造物にあたること、②Y6(和歌山県)が本件海水浴場を含む区域を管理しその管理業務等をY5(管理運営委員会)に委託している⇒Y5及びY6は本件海水浴場の設置・管理に瑕疵があるときには国賠法2条1項の責任を負う、③設置・管理の瑕疵には安全性を確保するための措置として構築された監視・救助体制の瑕疵も含まれる、④危険を回避する責任は本来的には本人にあるため管理者があらゆる対策を講ずる必要はなく合理的な範囲内で適切な措置を講ずれば瑕疵は存在しない、⑤監視・救助を行うものに瑕疵があったときには国賠法1条1項の責任が問題となる旨を判示。
その上で、本判決は、本件海水浴場の安全確保の措置にも、Y4による監視・救助体制にも不備はなく、Xらが主張するドン深区域内での浮きや5メートルおきでの警告板の不設置等についても設置・管理の瑕疵はない。
Y4のライフセーバーにも過失はない。
判例時報2296
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