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2016年8月15日 (月)

国際裁判管轄についての民訴法3条の9の「特別の事情」が肯定された事例

最高裁H28.3.10      
 
<事案>
Yがウェブサイトに掲載した記事によって名誉等をきそんされた⇒Xらが、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案。
米国ネバダ州法人であるYが記事をウェブサイトに掲載することによって、日本法人であるX1とその取締役であるX2の名誉等の毀損という結果が日本国内で発生日本の裁判所が管轄権(民訴法3条の3第8号)

争点は、民訴法3条の9の事情の有無。

X1の子会社でネバダ州法人であるA社は、ネバダ州でゲーミング(賭博営業)免許を受けているYの発行済株式の総数の約20%を保有し、X2はYの取締役でもあった。

ネバダ州の法令上、ゲーミング免許の取得者は、関係者が犯罪に関与するなど不適格であると規制当局に認定されると、当該免許をはく奪されることがある。

Yの定款には、取締役会が、ゲーミング免許の維持を脅かす可能性がある者として不適格であると判断した株主の株式を強制償還する旨の定め。

A社及びXらは、Yや他の出資者との間で、Yへの出資等に関連する複数の合意。これらの合意中には、同合意に関して提起される訴訟をネバダ州裁判所の専属管轄とし、ネバダ州法を準拠法とする定め

Yのコンプライアンス委員会からX2についての調査を依頼された米国の法律事務所は、平成24年2月18日、X2及びその関係者が、米国の海外腐敗行為防止法に違反する行為を繰り返してきたとみられること等を記載した報告書を提出。

Yの取締役会は、平成24年2月18日、前記報告書に基づき、A社及びXらはYの定款にいう不適格である者と判断し、A社が保有するYの株式を強制償還することを決議。

Yは、平成24年2月19日、そのウェブサイトに、
①前記報告書によって、X2及びその関係者が海外腐敗行為防止法等に違反する活動をしてきたことが立証されたこと、
②Yの取締役会が前記取締役会決議をしたことを内容とする、英語の記事を掲載。

Yは、平成24年2月19日、ネバダ州裁判所に対し、A社及びXらを被告とし、Yが合法的にかつ定款等に忠実に行動したことの確認請求等に係る訴訟を提起。

A社及びX1は、同年3月、Y及びその取締役らを被告として、Yの前記取締役決議の履行の差止め等を求める反訴を提起。

上記訴訟では、当事者双方から、多数の証人及び文書が開示され、その文書の大部分は英語で作成され、証人の大半は米国等に在住し日本語に通じない。
 
<規定>
民訴法 第3条の3(契約上の債務に関する訴え等の管轄権)
次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。

八 不法行為に関する訴え
不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。

民訴法 第3条の9(特別の事情による訴えの却下)
裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。
 
<原審>
①本件に係る紛争は、XらがA社を通じた出資等により参画したYの事業遂行に伴い生じたものであるところ、X・YらともYの事業・経営に関して日本の裁判所に訴訟が係属することを予想していなかった
②証拠の多くが米国に所在し、これらを日本の裁判所で取り調べるには翻訳等を要する
③Yにとって日本で本件訴訟に対応することは相当程度の負担となる

「特別の事情」があるとして、本件訴えを却下すべきものとした。
 
<判断>
上告を受理した上、上告を棄却。 
 
<解説>
平成23年改正により、民訴法に国際裁判管轄に関する規定が追加され、民訴法3条の9は、民訴法3条の2以下の規定により訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合においても、「特別の事情」がある場合に訴えの却下を認めた。

従前の判例の趣旨を踏まえ立法化されたもので、国内土地管轄に関しては裁量移送の制度によって適切な裁判所に移送することができるが、国際裁判管轄が問題となる事案では移送をすることができないから設けられた(立法担当者)。

本判決:
①本件が既に米国に裁判所に訴訟が係属していたYの株式の強制償還等に関する紛争から派生したものであること
②想定される本案の争点についての証拠方法が主に米国に所在すること
③X・Yらとも、Yの経営に関する紛争については米国で交渉、提訴等がされると想定していたこと
④Xらが本件訴えに係る請求のため訴訟を米国で提起追行することが、Xらに過大な紛体を課することになるとはいえないこと
前記の証拠を日本の裁判所において取り調べることはYに過大な負担を課することになるといえる
⇒特別の事情がある。

①は事案の性質や関連訴訟の存在
②は証拠の所在地
③は当事者の予測可能性
④⑤は、当事者の負担
を指摘。

判例時報2297

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