現行犯逮捕は肯定but被疑者に対する有形力の行使が違法⇒国賠請求肯定
大阪高裁H27.6.23
<事案>
警察官による現行犯逮捕の適法性及びその際の有形力行使の相当性が問題となった事案。
現行犯逮捕の要件を満たしておらず、XはAの暴行によって負傷⇒国賠法1条1項に基づき、入院雑費15万7500円と慰謝料241万円の合計256万7500円及び遅延損害金の支払を求め訴訟提起。
<原判決>
Xの転倒状況及び負傷の機序に関して、Y提出の意見書よりも鑑定結果をより信用すべきものとし、同鑑定結果に沿ったX供述に基づき事実認定。
XのAに対する公務執行妨害の事実が認められない以上、AのXに対する暴行は、現行犯逮捕に伴う有形力の行使とは認められず、違法。
⇒Yに対し、入院雑費15万7500円と(内容虚偽の現行犯逮捕手続書が作成されたことを重く見て)慰謝料120万円の合計135万7500円の損害賠償を命じた。
<判断>
Xの行為について、Xが自ら自転車を止めて降車し、単車から降車したAに近づき、その右肩を左手で1回突き、右手を振り上げて殴りかかろうとした旨認定⇒公務執行妨害の成立を肯定。
but
Aの制圧行為は現行犯逮捕のための有形力の行使ではあるが、Xの暴行が軽微で、Aと体格差もあった⇒社会通念上、逮捕のため必要かつ相当と認められる限度を超えた違法な有形力の行使。
⇒Xの入院雑費15万7500円と慰謝料50万円の合計65万7500円及び遅延損害金の損害賠償をYに命じた。
<解説>
現行犯逮捕のために許容される有形力行使については、最高裁昭和50.4.3が「現行犯逮捕をしようとする場合において、現行犯人から抵抗を受けたときは、逮捕をしようとする者は、警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であるとみとめられる限度内の実力を行使することが許され」る。
逮捕の適法性に関して当事者の言い分が真っ向から対立する事案では、証拠を慎重に検討する必要がある。
判例時報2294
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