収賄罪の共謀共同正犯として懲役刑に処する有罪判決確定⇒元知事に対する退職手当の返納命令(適法)
福島地裁H27.6.23
①収賄罪の共謀共同正犯として懲役刑に処する有罪判決確定⇒元知事に対して退職手当の返納を求める請求(適法)
②収賄罪の共謀共同正犯として懲役刑に処する有罪判決確定⇒元知事に対する退職手当の返納命令(適法)
<事案>
処分行政庁である福島県知事がXに対して、第三期分及び第四期分に係る支給済みの退職手当の返納を命じる処分(本件各処分)⇒Xが本件各処分の取消しを求め(②事件)
YがXに対し支給済みの退職手当の返還を求めた(①事件)
本件退職手当返納規定:
退職した職員であったものが「基礎在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁固以上の刑に処せられたとき」は、退職手当等の額の全額を返納させることができる旨規定。
<争点>
②事件において、本件各処分に違法性があるか
①事件において、本件各処分に重大明白な瑕疵があり無効といえるか
<判断>
本件各処分には違法性がなく、重大明白な瑕疵も認められない。
Xの主張:収賄被告事件が冤罪であるから本件各処分は違法と主張
but
本判決:
本件退職手当返納規定に関して、その趣旨を踏まえ、刑事事件において禁固以上の刑に処する旨の有罪判決が言い渡され、これが確定したことそのものを要件とし、返納命令を発する処分行政庁において、あらためて非違行為の存否を判断することが要件とはされていないとして、Xの主張を排斥。
Xの主張:Xは実行行為を分担しておらず、その弟の実行行為は第四期に行われていること、Xとその弟の間で共謀が成立したのも第四期であるから、Xの第三期に係る「基礎在職期間中の行為に係る刑事事件」に該当しない。
but
本判決:
「基礎在職期間中の行為に係る刑事事件に関し」との要件について、退職した職員に対する刑事事件の判決のいて摘示された「罪となるべき事実」に掲げられた犯罪の構成要件に該当する行為が、同職員の基礎在職期間中に行われていること指すものとする。
収賄被告事件の確定した高裁判決のの認定を詳細に検討し、同判決において「罪となるべき事実」として適示されたXとXの弟の共謀とは、第三期から第四期にかけて行われた行為を指しており、罪となるべき事実に掲げられたXの構成要件に該当する行為が、第三期に係る基礎在職期間中に行われている。
⇒
処分行政庁が、第三期分の退職手当についても返納命令を発したことに違法性がない。
判例時報2287
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