地方税法11条の8にいう「滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」の意義
最高裁H27.11.6
<事案>
株式会社Aが、東京都知事から株式会社Bを滞納者とする都税に係る徴収金について地方税法11条の8の規定による第二次納税義務の納付告知を受けた⇒A社を吸収合併したXが、Yを相手に、その取消しを認めた事案。
<解説>
第二次納税義務:
納税義務者が租税を滞納した場合において、その財産について滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に、納税義務者と一定の関係を有する者が納税義務者に代わって租税を納付する義務をいい、
国税及び地方税について、ほぼ同様の規定が設けられている(国税徴収法32条以下、地方税法11条以下)。
地方税法11条の8は、無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務について定めているところ、本件では、本件納付告知が同条にいう「滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」との要件(「徴収不足要件」)を満たすものであるかが争われた。
<判断>
徴収不足要件の意義について、第二次納税義務に係る納税告知時の現況において、本来の納税義務者の財産で滞納処分(交付要求及び参加差押えを含む。)により徴収することのできるものの価額が、同人に対する地方公共団体の徴収金の総額に満たないと客観的に認められる場合をいう。
①B社が破産手続j開始の決定を受け、本件納付告知の当時、B社の財産が破産管財人の管理下に置かれていたこと
②本件納付告知の前後の時期にB社が有していた財産の額がいずれも本件納付告知の時点における本件徴収金の額を大幅に上回るものであったことなど、本件の事実関係の下では、本件納付告知が徴収不足要件を満たしていたとはいえない。
<解説>
●
現行法が定める第二次納税義務には様々な態様があるが、いずれの場合も、本来の納税義務者が租税を滞納し、その財産につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められることが、第二次納税義務の成立要件とされており、地方税法11条の8は、「滞納者の地方団体の徴収金につき滞納処分をしてもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」と定めている。
要件の判断基準時:
①第二次納税義務の補充性(滞納処分により本来の納税義務者の財産から徴収できる金額が徴収すべき滞納税額に足りない場合に限って第二次納税義務者から徴収を図ろうとするものであること)
②徴収不足要件の「不足すると認められる場合」という文言
③同族会社の第二次納税義務の要件等に関する規定の内容
⇒
徴収不足要件の判断基準時は第二次納税義務者に対する納付告知の時点であると解されている。
徴収不足要件については、必ずしも本来の納税義務者の財産について現実に滞納処分を執行した結果に基づく必要はない(最高裁昭和47.5.25)。
●
抗告訴訟における違法判断緒基準時と裁判所が処分の適否を判断する際にいかなる資料を用い得るかの問題と同様、徴収不足要件の認定に当たっては、民事訴訟の一般原則に従い、裁判所は口頭弁論終結時までの全ての資料をしんしゃくすることができ、納付告知後の事実であっても納付告知時の事情を推認する価値のあるものは間接事実として判断の資料とすることが許され、課税庁がした第二次納付義務者に対する納付告知が事後的・客観的にみて徴収不足要件を欠くものであったと認められる場合には、上記納付告知は違法なものとして取り消されるべきものと解される。
判例時報2287
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