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2016年6月 6日 (月)

被告人を留め置いた措置、覚せい剤及び大麻の差押えは違法、鑑定書等の証拠能力は肯定

東京高裁H27.3.4      

<規定>
刑訴法 第198条〔被疑者の出頭要求・取調べ〕
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
 
<原審>
覚せい剤の所持を被疑事実とする捜索差押許可状に基づく、職務質問の現場における被告人の所持品等の創作並びにその結果派遣された覚せい剤及び大麻の差押えには重大な違法⇒それらの鑑定書及び現行犯逮捕後に任意提出された被告人の尿の鑑定書の証拠能力をいずれも否定し、被告人を無罪に。
 
<判断>

警察官が同令状の執行まで被告人を現場に留め置いた措置は、任意捜査として許容される限度を超えた違法なものであり、その状態を利用した捜索差押えも違法。 

任意捜査における有形力の行使は、相手方の同意・承諾がなくとも、有形力を用いる必要性と侵害される相手方の法益との均衡が保たれている限り許されるが、それは具体的状況のもとで相当と認められる限度内のものでなければならない。

本件は覚せい剤取締法違反という重大事犯であり、被告人の自由な行動を許せば薬物等を投棄することが想定できる⇒留め置きの必要性は肯定できる。
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本件留め置きは、再三立ち去ろうとしていた被告人の移動の自由、ときに身体の自由という重要な法益を侵害したもので、しかも被告人の動きに対応した受動的、一時的なものではなく、あらかじめ立ち去りを防止しようとして、約3時間40分にわたって移動を制限したもの。
手段の相当性を欠き、違法であり、その結果を利用した捜索差押も違法である。


前記鑑定書等の証拠能力は肯定し、原判決を破棄して被告人を有罪とした。
 
<解説> 
●薬物事犯において、被疑者の留め置きの適法性が争われる事例はすくない。 

東京高裁H21.7.1、同22.11.8:
留め置きを「純粋に任意捜査として行われている段階」と、強制採尿令状の請求準備着手以降の「強制手続への移行段階」とに分ける「二分論」の判断枠組みを提示し、後者については、被疑者に対する嫌疑が高まっていて、被疑者の所在を確保する必要性が高い
⇒「相当程度強くその場にとどまるよう被疑者に求めることも許される」との判断。

札幌高裁H26.12.18:
犯罪の嫌疑の程度は、採尿令状の請求準備を開始するか否かという警察官の判断により直ちに左右されるものではない⇒検察官が主張した二分論を採用せず、有形力の行使を伴う留め置きを違法としている。

本判決は、二分論に準拠したものではない。
違法判断に当たっては、当該有形力の行使が、任意捜査における有形力行使の許容性について判示した最高裁昭和51.3.16に照らし、相当な程度を超えたと判断されたことが重視

強制執行への移行段階に着目する場合、強制採尿令状であれば、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合の最終的手段として許容される(最高裁昭和55.10.23)⇒相応の説得をしても応じないことが要件となる
捜索差押許可状では、右要件が求められない⇒より早く令状請求に着手できる。
 
●原判決:
①令状発布の違法、②令状請求の疎明資料中の虚偽記載、③警察官の慎重さの欠如、④警察官の事実に反する証言などを証拠能力否定の理由。 

本判決:
①②④に関する原判決を誤りとし、③も違法を重大とするものではないとした。

①留め置きは悪質な態様とはいえず、法益侵害も重大とはいえない
②覚せい剤所持の嫌疑が相当程度認められ、留め置きの必要性があった
③覚せい剤等は令状に基づく捜索によって発見され、留め置きは同令状の執行確保のためであった
④二分論を採用した裁判例があり、これに沿った対応が行き過ぎたという面がある

証拠能力を肯定。

判例時報2286

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