処分不作為の違法確認が認められ、認可の義務付けの訴えは棄却された事例
名古屋高裁H27.7.10
採石法33条に定める採取計画の認可申請に対し、処分不作為の違法確認が認められ、認可の義務付けの訴えは棄却された事例
<事案>
処分行政庁が認可申請を認可すべきであるのに何らの処分をしないことは違法であるとして、処分行政庁の所属する県(Y)に対し
①本件認可申請について処分行政庁が何らの処分をしないことの違法確認(行訴法37条)と、
②処分行政庁が本件採取計画を認可することの義務付け(同法37条の3)を求めた事案の控訴審。
<規定>
行政事件訴訟法 第37条(不作為の違法確認の訴えの原告適格)
不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。
行政事件訴訟法 第37条の3
第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。.
<原審>
Xの請求①②の双方を認容。
<判断>
●請求①について
①Yが岩石採取計画の認可申請に対する処分をするまでの通常要すべき標準的な期間を申請受理から60日間と定めて公式ホームページに公表
②認定された事実関係によれば、処分行政庁は遅くとも平成26年12月末日の時点では、降水量に関する最新のデータに基づいて新規の採石認可申請に対する判断を行うことが可能な状態になっていたと認められること
③本件認可申請がされた後、処分行政庁が5回にわたって行ったXに対する補正指示の内容には、その趣旨が必ずしも判然としないものや一貫性がないものが含まれていること
④処分行政庁は事後的な規制権限を行使することによって実効的な濁水対策を実施をすることも可能であること
⇒
控訴審口頭弁論終結時(平成27年3月25日)の時点においては、処分行政庁が本件認可申請に対する処分をするのに必要な「相当の期間」(行訴法37条の3第1項1号)がすでに経過
⇒
XのYに対する前記不処分についての違法確認請求は理由がある。
●請求②について
都道府県知事は採石法33条の認可申請があった場合であっても、当該申請に係る採取計画に基づいて行う岩石の採取が他人に危害を及ぼし、農業、林業その他の産業の利益を損じる等、公共の福祉に反すると認めるときは、同条の認可をしてはならないとする同法33条の4、都道府県知事が同法33条の認可等に当たって条件を附することができるとする同法33条の7第1項等の規定を指摘。
本件認可申請に係る新たな採石事業による環境負荷、漁業への影響等に関して取り調べられた本件全証拠によっても、処分行政庁が本件認可申請を認可すべきか否か、認可する場合に条件を附すべきか否か、条件を附して認可する場合にどのような条件を附すべきかが一義的に明確になっているとは認めがたい。
⇒
処分行政庁が控訴審口頭弁論終結時において、本件認可申請について、Xの申請どおりの処分をしなければならないとまでいうことはできず、申請通りの処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると断定することはできない。
⇒
本件採取計画を認可することを求める義務付けの訴えは理由がない。
<解説>
具体的な事案が行訴法の不作為の違法確認の訴え及び義務付けの訴えの要件該当性が判断されたものとして参考になる。
判例時報2285
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