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2016年5月29日 (日)

5名殺害、住居2棟放火⇒完全責任能力肯定で、死刑判決の事例。

山口地裁H27.7.28      
 
<事案>
山間の農山村地域に住んでいた被告人らが、近隣住民が自分への嫌がらせをしているという妄想から、近隣住民5名を殺害し、一部被害者の住居二棟を放火したという、殺人、非現住建物等放火の事案。 
 
<主張>
①被告人は一連の殺人及び放火の犯人ではない。
②仮に犯人であったとしても、被告人は妄想性障害により事件当時は心神喪失又は心神耗弱の状態にあった。 
 
<判断>
責任能力について: 
鑑定人の鑑定意見を参照しつつ
①妄想により被告人に生じていた被害感が自らの生命に対する差し迫った危機感とは異なっていること
②本件各被害者に対する報復という被告人が供述する動機を完遂するために被告人自身が重要と考える行為をしていること
③妄想が被告人の行為の選択肢を狭めたり報復の仕方に影響を与えたりしたとはいえないことなどを、弁識能力・制御能力と関連付けながら指摘し、
結論として、妄想性障害に基づく被告人の妄想は、本件各被害者に対する報復という犯行の動機を形成する過程に影響したとはいえるが、報復をするか、報復をするとしてどのような方法で報復をするかは、被告人の人格に基づいて選択したこと
被告人の完全責任能力を肯定
 
<解説>
最高裁H20.4.25:
被告人の精神状態が心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所にゆだねられるべき問題であることを前提に、
生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度について、鑑定医の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、裁判所は、その意見を十分に尊重して認定すべき。 

最高裁H27.5.25:
妄想性障害にり患していた被告人が、隣人らに対する怨恨を募らせ、親族を含む隣人ら8名を襲撃し、うち7名を殺害し、1名に瀕死の重傷を負わせたほか、母親が現住する自宅に放火したという事案について、死刑判決を是認。

判例時報2285

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