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2016年5月31日 (火)

土地家屋調査士の懲戒処分を行わないとの決定の行政処分性(肯定)

名古屋高裁H27.11.12       
 
<事案>
原告らが国を被告として行政事件訴訟法の定める実質的当事者訴訟として、土地家屋調査士の懲戒処分を行わないという処分の違法確認を求めたもの。 
 
<一審>
原告らと国との間に公法上の法律関係が存在せず確認の利益が認められないとして、訴えを却下。 
 
<判断>
一審で明示的な主張がされていなかった本件決定の行政処分性について当事者双方に主張を尽くさせた上、本件決定の行政処分性を肯定し、原告らと国との間に公法上の法律関係が存在すると判断。
but
既にされた行政処分に対する不服の訴えは原則として抗告訴訟としての取消訴訟又は無効確認訴訟によるべきであって、本件について例外的に違法確認の訴えによるべき事情も見当たらない。
⇒結論としては一審の判断(訴え却下)を維持。
 
<解説> 
●本件決定の行政処分性
本判決は、各文献の記載とは異なり、本件決定の行政処分性を肯定

懲戒申出制度が「国民一般からの懲戒処分の請求を認めることを検討する」との政府の規制改革推進3か年計画を盛り込んで新設された制度であることを指摘し、法務局長等の応答義務や申出人からの不服申立てを認めなければ、この申出は法務局長等の職権発動を促すものにすぎなくなり立法前の状態を変わりはないから、立法の目的を達するには、懲戒申出を講学上の申請と解し、これを拒否する処分を行政処分と解する必要がある。

規制改革によって事前の帰省が緩和され、事後の監督が重視されるに至っているが、本判決は、事後の監督を所管官庁に任せるのではなく、これを規制対象者を利用する立場にある国民一般の監視下におき、不服申立てや行政訴訟の提起を可能にすることによって、監視の実効性を確保することが必要と考えているよう。
 
●本件訴えの適否 
従来から訴訟実務を支配している抗告訴訟中心主義⇒本件決定が行政処分である以上、本件訴えは不適法
本件のように既にされた行政処分については違法確認の訴えを認めないのが大方の見解。
最高裁H24.2.9が、公務員の処遇上の不利益の予防を目的とする確認訴訟を適法とするに当たって、行政処分による不利益の予防を目的とするものを除外しているのも同様の考え方。
 
●本判決の意義
弁護士については、既に懲戒請求者に日弁連への異議申出を明文の規定で認めているが(弁護士法64条1項)、取消訴訟の可否については明文の規定がなく、最高裁昭和38.10.18は弁護士会の自治を尊重する立場からこれを否定
but
弁護士法の会を再検討する1つの契機となりえる。
これまで行政庁に対する請求権はないものと考えられてきた各種の通報等の制度、例えば独禁法45条1項の報告などを再検討することを通じて、国民一般の行政に対する関与の在り方を考え直す契機を与える判決。

判例時報2286

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