訴訟代理人が、多数の法律雑誌に働きかけ、判例批評コメント⇒それを前提に第三者が判決を批判しているかのように控訴状に記載する行為は、弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」にあたるとした事例
東京高裁H27.6.18
<事案>
AとBとの売買システムの不備を理由とする注文不処理に関する損害賠償請求訴訟において、Aの代理人であった原告らX1、X2、X3が、X1らを懲戒しない旨の所属弁護士会の決定に対する懲戒請求者からの異議の申出を受けた被告日本弁護士連合会がした、所属弁護士会の決定を取消X1らを戒告する旨の各懲戒処分につき、弁護士法61条により取消しを求めた事案。
懲戒事由:
X1、X2、X3の行為は、一方当事者の代理人が公正中立な第三者や編集部などを装い判決の批評記事を掲載したものであって、読者の信頼を裏切るものであり弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。(懲戒事由1)
X1、X2の行為は、控訴状にあたかも第三者が判決を批判しているかのように装って、裁判所の判断を誤らせかねない記載をしたものであり、弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。(懲戒事由2)
<規定>
弁護士法 第61条(訴えの提起)
第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分についての審査請求を却下され若しくは棄却され、又は第六十条の規定により日本弁護士連合会から懲戒を受けた者は、東京高等裁判所にその取消しの訴えを提起することができる。
<判断>
弁護士懲戒制度の趣旨等に照らせば、ある事実関係が弁護士に対する懲戒事由に該当するかどうか、該当するとした場合に懲戒するか否か、懲戒するとしてどのような処分を選択するかは弁護士会の合理的な裁量に委ねられていると解され、全く事実の基礎を欠くか、又は社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用されたと認められる場合に限り、違法となる。(最高裁H18.9.14)
事実を認定した上、
X1、X2、X3の行為は、訴訟の一方代理人が訴訟の係属中に、訴訟の展開を有利に導く意図の下に、第三者を装って批評記事を執筆、掲載したとの評価を免れず(懲戒事由1)、
X1、X2の行為は、自らの執筆であることを秘して控訴状に第三者が判決を批判しているかのごとく指摘することは裁判官が誤解することも充分考えられるところであって、誠実性、公正性に欠け(懲戒事由2)、
いずれも弁護士としての品位を失うべき非行であり、
同様の前提で懲戒処分のうち最も軽い戒告とした本件懲戒処分が裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用したものとはいえず適法。
⇒
原告らの請求棄却。
判例時報2284
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