弁護士の懲戒請求を担当した弁護士会、日本弁護士連合会の懲戒請求者に対する不法行為責任(否定)
東京地裁H27.7.22
<事案>
Xは、平成23年12月、Y1(弁護士会)に対し、D(弁護士)につき虚偽の事実に基づきXの所属する司法書士会にXに関する苦情の申立てをしたこと等を理由に懲戒請求。
Xは、平成25年3月、本件懲戒請求につき相当期間内に懲戒手続を終えないことを理由とし、Y2連合会(日弁連)に対し異議の申出。
Y2の綱紀委員会は、平成25年4月、本件異議申出に理由があると認める旨を決議し、Y2は、Y1に速やかに懲戒手続を進め、懲戒に関する決定をすることを命じた。
Y1は、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする旨を決議。
⇒XはY2に対し、Y1の決定の取消しを求める異議の申出⇒Y2の綱紀委員会は、Y1の決定が相当であり、異議申出の棄却が相当と議決し、異議申出を棄却⇒Xは綱紀審査の申出⇒綱紀審査申出を棄却する旨の決定。
⇒
共同不法行為を主張して訴訟提起。
<規定>
弁護士法 第58条(懲戒の請求、調査及び審査)
何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
<判断>
弁護士法58条1項が何人にも広く懲戒請求件を認めたのは懲戒請求権者の個人的利益の保護のためではない
⇒
懲戒請求者は、弁護士会に対し適切な懲戒権の行使を求めるなどの具体的権利を有するものではなく、弁護士会による懲戒権の行使に違法不当な点があったとしても、これにより懲戒請求者の権利又は法的保護に値する利益が侵害する余地はない
⇒
懲戒請求権の侵害等を理由とする不法行為を否定。
弁護士法31条1項、45条2項の弁護士らに対する指導、連絡、監督は、専ら所属弁護士の具体的な職務執行や事件処理にわたらない範囲での研修、研究等の一般的な指導監督を想定したものであり、弁護士会あるいはY2の指導監督による是正が特に必要であるとの特段の事情が存在する場合のほかは許されず、本件では特段の事情が認められない。
⇒
Y1,Y2が弁護士Dに対する指導監督義務を負っていたとは認められず、Y2がY1に対してこの点につき指導監督義務を負っていたとも認められない
⇒指導監督請求権の侵害を理由とする不法行為も否定。
判例時報2283
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