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2016年4月16日 (土)

在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合における、原子爆弾被爆者に対する救護に関する法律18条1項の適用(肯定)

最高裁H27.9.8    

<事案>
広島市に投下された原子爆弾により被爆し、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(「被爆者援護法」)に基づき 被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者ら3名につき、その居住国である大韓民国で受けた医療に関して同法18条1項に定める一般疾病医療費の支給の申請⇒大阪府知事により、在外被爆者(同法1条所定の被爆者であって日本国内に居住地及び現在地を有しないもの)に対して同項の規定を適用することができない旨の理由でそれぞれ却下処分
⇒上記被爆者又はその相続人であるXらが、大阪府を相手に、本件各処分の取消等を求めた
 
<判断>
被爆者援護法18条1項の規定は在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合にも適用されるものと解するのが相当⇒原審の判断は是認できる⇒上告棄却。 

①被爆者援護法18条1項は、その支給対象者として「被爆者」と規定するにとどまり、被爆者が日本国内に居住地若しくは現在地を有すること、又は日本国内で医療を受けたことをその支給の要件として定めていない
②同項にいう「一般疾病医療機関(同法19条1項の規定に基づき都道府県知事が指定する医療機関)以外の者」につき、日本国内で医療を行う者に限定する旨の規定はない
③在外被爆者が医療を受けるため日本に渡航することには相応の困難を伴うのが通常であると考えられるところ、在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合に一般疾病医療費の支給を一切受けられないとすれば、同法が、原子爆弾の放射能に起因する健康被害の特異性及び重大性に鑑み、被爆者の置かれている特別の健康状態に着目してこれを救済するという目的から被爆者の援護について定めた趣旨に反することになる。

被爆者援護法18条1項が、一般疾病医療機関以外の者から医療を受けた場合の一般疾病医療費の支給につき「緊急その他やむを得ない理由」を要件としていることにも言及し、
「被爆者の居住地又は現在地付近に一般疾病医療機関がないため近隣に所在する一般疾病医療機関以外の者から医療を受けることとなった場合には、上記の要件が満たされるものと解され在外被爆者が日本国外で医療を受けた場合にも、これと同様に解することができる。」

判例時報2283

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