国立高専准教授の訓告等に関する独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律13条1項に基づく 保有個人情報の開示請求につき不開示の処分の一部取消(一部肯定)
東京地裁H27.6.25
<事案>
Y(独立業絵師法人国立高等専門学校)に対して、X(准教授を務めていた者)が、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(「法」)に基づき、保有個人情報の開示請求⇒Yがその全部を開示しない旨の決定⇒Xがその取消しを求める事案。
開示を求めたXを本人とする個人情報
①訓告書にある『職場の秩序を乱した』に係る個人情報
②訓告の原因となった成績評価の調査に係る個人情報
③平成20年10月、懲戒委調査委員会が提示した書面。及びこれの書面作成に利用した個人情報。
Yは、①②について、「開示請求の対象が保有個人情報に該当しない」ことを理由として、③について、「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある」ことを理由として、保有個人情報の全部を開示しない旨の決定。
本件訴訟では、Yは、①について、上記決定の理由と異なり、請求に係る保有個人情報を被告が保有していることを認めた上で、当該保有個人情報に法14条5号ヘが掲げる不開示情報が含まれていることを理由とする。
<判断>
●情報①について
一般に、取消訴訟においては、別異に解すべき特段の理由のない限り、行政庁は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが許されるものと解すべき(最高裁昭和53.9.19)。
行政手続法や法の規定をみても、理由提示の定めが「一たび通知書に理由を付記した以上、行政庁が当該理由以外の理由を不開示決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨を含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である」(最高裁H11.11.19)
⇒理由の差替えを肯定。
情報①に係る法人文書である原議書に記録された情報は、それが開示されることにより、Yにおける人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる
⇒法14条5号へ所定の不開示情報に当たる。
●情報②について
Xとしては、報告書の前提をなす事情聴取等の内容がXに係る個人情報に当たる場合には、当該情報もまた開示請求の対象とする趣旨のものと解される。
Yは情報②の「事実関係について」jにおいてXが開示を求める保有個人情報の内容を保有していると認められるが、Yは、上記個人情報につき、それが不存在であるということのもいを主張。
⇒
本件決定のうち、上記個人情報を不開示とした部分は違法。
Yの主張は、Xが本件報告書の少なくとも一部を保有していると認められることからすれば、そこに記載されている個人情報までをも開示請求対象とするものではない趣旨とも解されるが、事情聴取等の内容を含む上記関係資料には本件報告書に記載された内容よりも詳しい内容が記載されているものと推認し得る
⇒
本件報告書が開示請求対象外であったからといって、その前提となる資料に係る個人情報までもが直ちに開示請求対象外になるとはいえない。
●情報③について
Xが前訴で取消しを求めた別件決定と、Xが本訴で取消しを求める本件決定は別個の処分であり、その訴訟物は異なる
⇒前訴判決の既判力が本訴に及ぶと解することはできない。
情報②が記録された法人文書としてYが保有するのはA高専に懲戒審査委員会を設置するための原議書であり、そこに記録された情報は、法14条5号ヘ所定の不開示情報に該当。
判例時報2283
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