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2016年4月29日 (金)

家電量販店で万引きをした被告人に対し、行為時にNCSE(非けいれん性てんかん重積)による意識障害の状態(分別もうろう状態)にあった可能性が高い⇒心神喪失(肯定)

東京地裁立川支部H27.4.14   

<争点>
被告人の責任能力 
 
<解説・判断>
●NCSE(非けいれん性てんかん重積)とは、てんかん発作が一定時間以上連続的に生じる状態でけいれんを伴わないものを指し、意識障害(分別もうろう状態)が主要な臨床症状となる。この意識障害下では、意識の清明度は軽度に下がるのみであるが、広がりや方向性が高度に狭められ、一見まとまった行動をとっているように見えるが、それまで行っていた動作を半意識的に続けたり、理性が低下して欲求が行動化したりすることがあるとされる。
けいれんのような素人にも明らかな症状がない⇒周囲の人も気付かないことが多く、このタイプのてんかん重積はしばしば見逃されていると言われる。
 
●精神鑑定:
・・・分別もうろう状態の脳波の特徴から、本件行動時の被告人はいわば夢の中で行動しているような状況で、葛藤や欲求を抑制していた理性がはずれている
事理弁識能力を肯定しつつ行動制御能力を否定。 
 
生物学的要素である精神障害の有無及び程度、並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については、精神科医の意見が鑑定等として証拠になっている場合には、これを採用し得ない合理的な事情が認められない限りその意見を十分に尊重して認定すべきである(最高裁H20.4.25)。

最終的に心神喪失か心神耗弱化については法律判断として規範的評価を加えるべき問題(最高裁昭和58.9.13)
⇒本判決jも、犯行態様を詳細に検討して責任能力を検討。 
 
●判断:
鑑定の信用性を肯定。
被告人の行動が異常、不自然であることや、記憶を正確に保持していなかった疑いがあること、本件行為と病前性格との親和性が乏しいこと
鑑定のとおり本件行為時に被告人がNCSEによる意識障害の状態(分別もうろう状態)にあった可能性が高い
 
本件は、行為態様に責任能力を肯定する要素もあった。
but
本件行為の状況が、「ある程度の行動制御能力を有していれば途中で犯行を思いとどまってしかるべき」ものであったのに万引きを遂げたことを根拠に行動制御能力を否定して、心神耗弱にとどまらず心神喪失を肯定。

判例時報2283

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