自動車が吹雪による雪だまりに埋まって死亡⇒国賠請求(否定)
札幌高裁H27.7.7
自動車が吹雪による雪だまりに埋まって死亡⇒国賠請求(否定)
<事案>
自動車が吹雪による雪の吹きだまりに埋まる⇒一酸化炭素中毒により死亡
両親であるXらが、本件道路を管理しているY(北海道)に対し、
①本件事故現場付近に設置された防雪柵の設置又は管理に瑕疵があり、また、
②道路法所定の事前規制などの措置を講じなかった違法がある
と主張し、国賠法に基づき、損害賠償等を請求。
<規定>
道路法 第46条(通行の禁止又は制限)
道路管理者は、左の各号の一に掲げる場合においては、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、区間を定めて、道路の通行を禁止し、又は制限することができる。
一 道路の破損、欠壊その他の事由に因り交通が危険であると認められる場合
二 道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合
<原審>
Yに対する損害賠償請求を一部認容。
<判断>
「道路吹雪対策マニュアル」での設置基準によれば、本件事故現場付近に設置された防雪柵が不適であったとは認められず、通常有すべき安全性を備えていたが、これまでの観測記録では想定できない気象状況により、本件現場付近に巨大な吹きだまりが発生し、本件事故に至った。
⇒本件防護柵の設置又は管理に瑕疵があったとはみとめられない。
道路法46条1項所定の規制権限の行使については、道路管理者が交通の危険が発生することの確実な状況を予見することが可能であり、かつ、その権限を行使することによって当該危険を防止することができる場合には、その権限の不行使は著しく合理性を欠くものとして違法となると解される。
本件事故現場付近にできた巨大な吹きだまりは、ごく局地的かつ、前例が無い特異な暴風雪によるものと認められ、道路管理者において、前例のない特異な暴風雪により巨大ない吹きだまりに道路利用者が埋まるとの本件事故の発生を予見できたとは認めがたい。
⇒Yの国賠責任を否定。
<解説>
道路の設置又は管理上の瑕疵とは、道路の通常有すべき安全性を欠く状態をいい、それは、道路の設置、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合的考慮して個別的具体的に判断すべきであるが(最高裁昭和59.1.26)、事故が不可抗力による場合ないし回避可能性のない場合には、免責されるとするのが判例の立場(最高裁昭和45.8.20)。
判例時報2280
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