親権者による児童に対する虐待等を理由として行われた一時保護の継続と損害賠償請求(否定)
東京地裁H27.3.11
親権者による児童に対する虐待等を理由として行われた一時保護の継続と損害賠償請求(否定)
<事案>
医療機関は、被告(東京都)の設置する児童相談所(「本件相談所」)に児童虐待の防止等に関する法律6条に基づく通告
⇒本件相談所長は、平成23年5月30日、児童福祉法33条に基づきX3の一時保護を決定し、同日、X3を一時保護。
本件相談所長は、医学部医学教室教授に対する医学相談等を行った上、同年9月9日、東京家庭裁判所に対し児童福祉法28条1項に基づく児童福祉施設入所の承認を求める審判(本件審判事件)⇒同申立ては平成24年1月6日に却下、即時抗告も却下⇒同月10日、一時保護を解除。
X3及びその親権者であるX1及びX2は、一時保護決定の要件である「必要があると認めるとき」に該当するか否かは限定的に解する必要があり、必要最小限の期間を超えて一時保護を継続することは児童相談所長の裁量権を逸脱し、又は権限を濫用するものとして違法⇒国賠請求として、慰謝料各200万円等の賠償を求めた。
<判断>
児童福祉法の規定から認められる一時保護の目的や規定の文言等⇒一時保護を加えるか否かの判断やどのような期間一時保護を継続するかの判断、これと同趣旨の一時保護を解除するか否かは児童相談所長の合理的な裁量に委ねられており、一時保護処分の継続が国賠法上の違法行為となるのは児童相談所長が上記裁量を逸脱又は濫用した場合。
本件相談所長が本件一時保護決定の時点で有していた一時保護の必要性を基礎付ける事情に照らすと、本件相談所長が一時保護を継続したことが違法となるには、X3の監護をX1及びX2に委ねてもX3の福祉を害するおそれがあるとはいえないこと、すなわち一時保護を解除すべき基礎となる事実が存在し、かつ本件相談所長が当該事実を認識していたか、あるいは児童相談初として通常行う調査をすることにより認識することができたと認められることが必要。
本件相談所により行われた調査の内容及びXらが行うべきであったと主張する調査により判明したであろう事実、本件審判事件等において示されたX1及びX2の意向等を検討し、一時保護が解除された平成24年4月10日よりも前に本件相談所長が一時保護を解除すべきであると判断すべき事実が存在したとは認めるに足りない。
⇒同日まで一時保護を解除しなかったことが違法であるとは認められない。
判例時報2281
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