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2016年3月 2日 (水)

地方税法343条2項後段の類推適用により、当該土地の所在する地区の住民により組織されている自治会又は町会が固定資産税の納税義務者に当たるとした原審の判断は違法

最高裁H27.7.17   

登記簿の表題部の所有者欄に「大字西」などと記載されている土地につき、地方税法343条2項後段の類推適用により、当該土地の所在する地区の住民により組織されている自治会又は町会が固定資産税の納税義務者に当たるとした原審の判断は違法。 
 
<事案>
堺市の住民であるXが、平成18年度から平成20年度までについて当時の堺市長が固定資産税及び都市計画税の賦課徴収を違法に怠った⇒地方税法18条1項の徴収権に係る消滅時効の完成により堺市に損害⇒地方自治法242条の2第1項4号に基づき、同市の執行機関であるY(堺市長)を相手に、本件固定資産税等の徴収権に係る消滅時効が完成するまでの期間において堺市長の職にあった者及びその賦課徴収に係る専決事項を有する各市税事務所長の職にあった者(本件各専決権者)に対して本件固定資産税等相当額の損害賠償請求をすること等を求める住民訴訟 
 
<規定>
地方税法 第343条(固定資産税の納税義務者等)
固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
 
<原審> 
①関係自治会等は、本件固定資産税等の賦課期日における本件各土地の登記簿上の所有名義人であるとはいえない⇒地方税法343条2項前段に基づいて本件固定資産税等の納税義務者に当たるとみることはできない。 
②関係自治会などは、台帳登録財産である本件各土地につき、堺市により同市の定める要綱等に従ってその管理処分権限を有する団体として取り扱われる本件各土地の実質的な所有者を評価することができる。

本件各土地については、地方税法343条2項後段を類推適用して、関係自治会等が同項後段にいう「現に所有している者」として当該土地の本件固定資産税等の納税義務者に当たるとみるべき。
 
<判断>
原審は、本件各土地につき、本件固定資産税等の賦課期日におけるその所有権の帰属を確定することなく、・・要綱等における取扱い等に照らして関係自治会等をその実質的な所有者と評価することができるなどとして、地方税法343条2項後段の規定を類推適用することにより、関係自治会等が本件固定資産税等の納税義務者に該当する旨の判断をしたものであり、このような原審の判断には、同項後段の解釈適用を誤った違法がある
 
<解説>
●租税法律主義について

最高裁昭和60.3.27:
租税は、国家が、その課税権に基づき、特別の給付に対する反対給付としてではなく、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、一定の要件に外とするすべての者に関する金銭給付であるが、およそ民主主義国家にあっては、国家の維持及び活動に必要な経費は、主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであり、わが国の憲法も、かかる見地の下に、国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うことを定め(30条)、新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要としている(84条)。それゆえ、課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で明確に定めることが必要である・・・

課税要件法定主義(課税要件及び租税の賦課徴収の手続は法律によって規定されなければならないこと)と
課税要件明確主義(課税要件及び租税の賦課徴収の手続はなるべく一義的で明確でなければならないこと)
を確認したもの。

租税法律主義の原則は、国民の経済生活における法的安定性を図り、将来の予測可能性を与えることをその趣旨とするものであるところ、この原則は、単に立法上の原則にとどまるものではなく、租税法規の解釈にもその趣旨が及ぶ

租税法規の解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡大解釈や類推解釈を行うことは許されない。(金子租税法20版、114頁)
 
①最高裁昭和48.11.16:
譲渡担保による不動産の取得につき地方税法73条の7第3号(当時)を類推適用した原審の判断につき、「地方税法73条の7第3号は信託財産を移す場合における不動産の取得についてだけ非課税とすべき旨を定めたものであり、租税法の規定はみだりに拡張適用すべきものではない
⇒譲渡担保による不動産の取得についてはこれを類推適用すべきものではない。

②最高裁H22.3.2:
ホステスに対する報酬に係る所得税法施行令322条の「当該支払機関の計算期間の日数」とは、集計期間の日数ではなく、その実際の出勤日数であるとした原審の判断につき、「原審は、上記・・・のとおり判断するが、租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく、原審のような解釈を採ることは、・・・文言上困難である」などとして、原審のような解釈は採用できないとした。

課税実務上想定されていなかった方法による租税回避を容認することが適当でないというのであれば、「法の解釈では限界があるので、そのような事態に対応できるような立法により対処すべきものである」とする最高裁H23.2.18
 
●地方税法343条2項後段は、土地又は家屋の固定資産税の納税義務者たる所有者の意義について、登記簿等に所有者として登記又は登録されいている法人が賦課期日前に消滅しているときについては、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする旨規定

ある土地につき同項後段により固定資産税の納税義務者に該当するというためには、少なくとも、「当該土地を現に所有している者」であること、すなわち、賦課期日において当該土地の所有権が当該者に現に帰属していたことが必要
but
原審は、本家土地につき、本件固定資産税等の賦課期日におけるその所有権の帰属を確定することなく(すなわち、本件各土地の所有権の帰属につき当事者間に争いがあるにもかかわらず、関係自治会等がその所有権を承継取得又は原始取得した事実関係を認定することなく)、堺市の要綱等における取扱い等に照らして関係自治会等をその実質的な所有者と評価することができるなどとして、地方税法343条2項後段の規定を類推適用。 
 
●たとえ原審の採用した解釈が正当であるとしても、このような解釈は一般的なものではない本件各市長や本件各専決権者が原審と同様の解釈を採用しなかったからといって、その法令解釈の誤りにつき過失があるとはいえない(最高裁H16.1.15)。 

判例時報2279

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