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2016年3月 1日 (火)

米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPSの所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人該当性(肯定)

最高裁H27.7.17   

1.外国法に基づいて設立された組織体の所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人該当性の判断
2.米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPSが行う不動産賃貸事業への出資と、その損失の損益通算の可否
 
<事案>
米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップが行う中古集合住宅の賃貸事業に係る投資事業に出資した投資家らが、当該賃貸事業により生じた所得が同人らの不動産所得(所得税法26条1項)に該当するとして、その所得の金額の計算上生じた損失の金額を同人らの他の所得の金額から控除して所得税の申告又は更正の請求

所轄税務署長から、上記のような損益通算をすることはできないとして、それぞれ所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分又は更正をすべき理由がない旨の通知処分。

各処分の取消しを求めた。
 
<規定>
所得税法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
七 外国法人 内国法人以外の法人をいう。

法人税法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
四 外国法人 内国法人以外の法人をいう。
 
<争点>
外国法に基づいて設立された事業体ないし組織体(「外国事業体」)が我が国の租税法上の法人に該当するか否かにつき、いかなる判断枠組みを採用することが相当か。
かかる判断枠組みを前提に本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか。 
 
<一審・原審>
本件各LPSが我が国の租税法上の法人には該当せず、我が国の租税法上の人格のない社団等にも該当しない。
⇒本件各LPSが行う不動産賃貸事業により生じた所得は、本件出資者らの不動産所得に該当。
⇒その不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額あるときは損失通算をした上で総所得金額及び納付すべき税額を算定すべき。 
 
<判断>
ある組織体が法人として納税義務者に該当するか否かの問題は我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題である。

外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かは、当該組織体が日本法上の法人との対比において我が国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されている。
 
外国事業体が所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号に定める外国法人に該当するか否かを判断するための枠組み

当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討
これができない場合には、

当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討することとなる。

州LPS法の定めの内容等を検討した上で、本件各LPSが自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が本件各LPSに帰属するものということができる。
権利義務の帰属主体であると認められる。
本件各LPSは、所得税法2条1項7号に定める外国法人に該当するものというべき。
⇒本件出資者らは、本件各LPSが行う不動産賃貸事業による所得の計算上生じた損失の金額を各自の所得の金額から控除することはできない
 
<解説>
外国法人について「内国法人以外の法人をいう。」とのみ定義しており(所得税法2条1項7号、法人税法2条4号)、

内国法人は「国内に本店又は主たる事業所を有する法人をいう。」と定義(所得税法2条1項6号、法人税法2条3号)。
「法人」についての定義はない

外国事業体が所得税法等にいう法人に該当するか否かに係る判断方法は解釈により決するほかない。

A:外国私法基準説:外国事業体の設立準拠国(地域)の法令により、当該事業体に法人格を付与されているか否かを検討すべき

B:内国私法基準説我が国の私法において法人がいかなる属性を有するとされているかを検討した上で、当該外国事業体がそのような属性を有するかにより法人該当性を判断すべき。

本判決は、Bを基本。

判例時報2279

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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