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2016年3月23日 (水)

保険約款に定める免責条項である「自殺」の該当性

甲府地裁H27.7.14      
 
<事案>
Aは、Y組合の営業担当職員として勤務。
Y組合との間で、Aを被共済者、Xを死亡共済金受取人とする終身共済契約、定期生命共済契約を締結。
本件共済契約には契約締結から2年以内に被共済者が自殺した場合には、共済金を支払わないという旨の定め。

Aは、契約締結から2年以内に自殺
Aの父親であるXが、Yに対し、死亡共済金の支払を請求⇒Yは本件免責条項に該当するとして支払を拒絶。 
 
<規定> 
保険法 第51条(保険者の免責)
死亡保険契約の保険者は、次に掲げる場合には、保険給付を行う責任を負わない。ただし、第三号に掲げる場合には、被保険者を故意に死亡させた保険金受取人以外の保険金受取人に対する責任については、この限りでない。
一 被保険者が自殺をしたとき
二 保険契約者が被保険者を故意に死亡させたとき(前号に掲げる場合を除く。)。
三 保険金受取人が被保険者を故意に死亡させたとき(前二号に掲げる場合を除く。)。
四 戦争その他の変乱によって被保険者が死亡したとき。
 
<争点>
Aの自殺が本件免責条項所定の「自殺」に該当するか。
 
<判断>
Aは、上司であるB支店長から、叱責、暴行等のパワハラを受け、自殺直前には、重度のストレス反応及び適応障害を発症していたとの事実。
労働基準監督署は、Aの自殺は精神的な抑制力が著しく阻害された状態で行われたとして、遺族補償年金等の支給決定。 

本件免責条項にいうところの「自殺」とは、「被共済者の自由な意思決定に基づいてされた自殺をいうことから、被共済者の自由な意思決定に基づかないでされた自殺は本件免責条項にいう「自殺」に含まれない

「自殺」に当たるか否かは、労災の判断とは別個に行うのが相当であるところ、具体的には
①精神障害罹患前の本来的性格・人格との乖離
②自殺に至るまでの言動
③自殺の態様及び動機等の事情
を総合的に判断するのが相当。

Aは、重度のストレス反応(重度ストレスへの反応)及び適応障害の精神障害を発症しており、Aの本来的性格・人格と、自殺前の性格・人格には乖離が見られ、自殺に至る言動や自殺の態様にも異常性が見られる

上記精神障害がAの自由な意思決定能力を喪失ないし著しく減弱させた結果、Aは自殺に及んだ

本件免責条項にいうところの「自殺」には当たらないとして、Xの請求を認容。
 
<解説>
保険共済契約は、生命保険契約であるところ、保険法51条1号では、被保険者(被共済者)の自殺は、免責事由と法定されている。

被保険者はその生死が保険事故とされている者であるから、その者が自殺という行為により自らにより自ら保険者の保険給付義務を発生させる保険事故を生じさせることは保険契約上の信義則に反する。

被保険者の精神障害中の自殺については、免責事由としての自殺には該当しないというのが確立した判例
精神障害中であるとは、被保険者が自由な意思決定をなしうる状態にはないということを意味するとされており、本判決でも同様の立場。

判例時報2280

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