夫のみに年齢要件を課す遺族補償年金の受給規定と憲法14条(合憲)
大阪高裁H27.6.19
夫のみに年齢要件を課す遺族補償年金の受給規定と憲法14条(合憲)
<事案>
遺族補償年金の受給について夫にのみ年齢要件を課す地方公務員災害補償法32条1項が憲法14条に反しないかが争われた事案。
<原判決>
遺族補償年金をを純粋な社会保障制度ではないとした上で、専業主婦世帯が多数を占めていた制定当時と異なり、現代では共働き世帯が一般化し、他の分野でも男女を同等にするように修正されている。
⇒同法の区別は不合理な差別に当たるとし違憲の判断。
同制度を損害賠償と社会保障が併存するものと位置づけ。
同制度については立法裁量が認められるとしつつ、そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には平等違反になる。
性に基づく区分⇒そのような区分をすることに合理的な根拠があるかどうかを審査。
<判断>
社会保障制度における区別の合理性の問題と捉え、現状においても当該区別には合理性があるとして原判決を破棄し、合憲の判断を下した。
基本的に社会保障的性格とみなす。
社会保障の問題⇒憲法25条の社会権の要請⇒制度の仕組みについては広範な立法裁量が認められる。
もし、その制度に合理的理由のない不当な差別的取扱いが生じた場合には平等の問題となる。
社会保障の仕組みは広い立法裁量が認められる⇒「それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用」といえるような場合を除き裁判所の判断に適しない。
堀木訴訟・塩見訴訟・学生無年金訴訟(いずれも社会権の問題に付随する形で平等が争われた事案)を引用しながら、支給要件等に「何ら合理的理由のない不当な差別的取扱い」がある場合には平等の問題が生じる。
現在においても、①女性(特に妻)の労働力率(労働人口の割合)が低いこと、②非正規雇用が男性より多いこと(男性の約3倍)、③男女間の賃金格差が大きいこと(男性の約6割以下)、④専業主婦世帯が共働き世帯よりも少なくなっているものの専業主夫世帯よりも多いこと(約100倍)
⇒
受給年齢につき夫と妻とで区別することの合理性を認めた。
判例時報2280
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