拘置所での接見交通中の写真撮影による接見の一時停止・終了
東京高裁H27.7.9
拘置所での接見交通中の写真撮影による接見の一時停止
<事案>
東京拘置所で、弁護人Xが拘留中の被告人との接見中、職員から、写真撮影等を禁止され、接見を終了させられた
⇒
接見交通権や弁護活動を侵害し違法である、また、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(収用法)の定める要件に違反し違法であるとして、Y(国)に対し、国賠法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた。
<規定>
刑訴法 第39条〔被疑者・被告人との接見・授受〕
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
刑訴法 第179条〔防御のための強制処分による証拠保全〕
被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。
②前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
収用法 第117条(面会の一時停止及び終了)
第百十三条(第一項第二号ホを除く。)の規定は、未決拘禁者の面会について準用する。この場合において、同項中「各号のいずれか」とあるのは「各号のいずれか(弁護人等との面会の場合にあっては、第一号ロに限る。)」と、同項第二号ニ中「受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障」とあるのは「罪証の隠滅の結果」と読み替えるものとする。
収用法 第113条(面会の一時停止及び終了)
刑事施設の職員は、次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為若しくは発言を制止し、又はその面会を一時停止させることができる。この場合においては、面会の一時停止のため、受刑者又は面会の相手方に対し面会の場所からの退出を命じ、その他必要な措置を執ることができる。
一 受刑者又は面会の相手方が次のイ又はロのいずれかに該当する行為をするとき。
イ 次条第一項の規定による制限に違反する行為
ロ 刑事施設の規律及び秩序を害する行為
二 受刑者又は面会の相手方が次のイからホまでのいずれかに該当する内容の発言をするとき。
イ 暗号の使用その他の理由によって、刑事施設の職員が理解できないもの
ロ 犯罪の実行を共謀し、あおり、又は唆すもの
ハ 刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれのあるもの
ニ 受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれのあるもの
ホ 特定の用務の処理のため必要であることを理由として許された面会において、その用務の処理のため必要な範囲を明らかに逸脱するもの
2 刑事施設の長は、前項の規定により面会が一時停止された場合において、面会を継続させることが相当でないと認めるときは、その面会を終わらせることができる。
<判断>
●刑訴法39条1項の「接見」とは、被告人が弁護人等と面会して相談し、その助言を受けるなどの会話による面接を通じて意思の疎通を図り、援助を受けることをいうものであって、弁護人が面会時の様子や結果を音声や画像等に記録化することは「接見」に本来的に含まれない。
メモのように弁護人の接見交通権の保障の範囲内として認められるものもあるが、情報の記録化のための行為が許容されるか否かは、その目的、必要性、態様の相当性、危険性等の諸事情を考慮して検討されるべき。
本件撮影行為は証拠保全として行われたところ、刑訴法179条の証拠保全によって行うことが予定され、それで足りるから、これを禁止しても弁護活動を不当に制約するものではない。
●弁護人等が規律など侵害行為をする場合に、面会の終了等の措置を執ることは、収用法117条、113条1項及び2項に基づく措置である。
同各条項は、逃亡及び罪証隠滅のおそれ等の相当の蓋然性をも要件としているものではない。
庁舎の管理者は、庁舎内における写真撮影等を禁止することができ、東京拘置所庁は、庁舎管理権に基づき、面会室内での写真撮影等を禁止し掲示していた。
Xは掲示内容を認識しながら、本件撮影行為を行い、職員から、画像データの消去を求められたのに拒否し続け、更に写真撮影等を行う意向を表明した。
このようなXの行為は規律等侵害行為に該当。
●収用法113条1項の面会の一時停止の措置とは面会を暫定的に中断させる行為をいい、面会の当事者が自由に面会を再開できない状態にするまでの行為は必要ない。
職員によりAとXの面会が暫定的に中断⇒面会の一時停止の措置が執られた。
●収用法117条、113条2項は、刑事施設の長が、事前に、規律等侵害行為がされた場合に面会の終了の措置を執るよう指示することを許容するもの。
東京拘置所長は、職員に写真撮影等の行為について制止に応じないなどの場合に面会の終了の措置を執るよう指示していた⇒本件措置は刑事施設の長の判断に基づくもの。
判例時報2280
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