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2016年3月30日 (水)

過払金が発生している継続的金銭消費貸借取引についての裁判外の和解の効力が否定された事例

東京高裁H27.10.15    

過払金が発生している継続的金銭消費貸借取引についての裁判外の和解の効力が否定された事例
 
<事案>
和解
Xは、Yに対し、借入金返還債務として、2万8000円をの支払義務があることを認める。
XとYとの間には、本件和解に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。
 
<規定>
民法 第695条(和解) 
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
 
<争点>
本件和解の対象に本件過払金請求権についての争いが含まれるか? 
 
<原審>
本件和解をした当時、XのYに対する借入金返還債務が存在したのであれば、過払金請求権は存在しなかったことになり、逆に、過払金請求権が存在したのであれば、借入金返還債務はなかったことになるから、借入金返還債務と過払金請求権とは、同一の事柄のふたつの側面にすぎず、本件和解において、過払金請求権についての争いも本件和解の対象であったというべき
⇒本件和解の効力によって本件過払金請求権は消滅したとして、Xの請求を棄却。
 
<控訴>
Xは、本件和解をした当時約定借入金債務の残高が5万5310円であると誤信しており、本件過払金請求権があることを認識していなかった⇒原判決を不服として控訴。 
 
<判断> 
XはYに対し本件和解の当時客観的には本件過払請求権を有していたものの、次の(1)及び(2)など判示の事実関係の下においては、本件和解は過払金返還請求権についての争いを対象とするものではなく、本件和解の効力は否定されるべき⇒Xの請求を一部認容。 
(1)Xは、弁護士等の法律専門家に一切相談することなく、Yからの提案をそのまま受けた本件和解をした。
(2)本件和解において、XとYとの間で約定借入金債務の残額が5万5310円であったことにつき何ら争いはなく、Xは、過払金等が発生したことについて全く認識していなかった
(3)当事者間に過払金請求権の発生の有無をめぐって争いがあったという余地はなく、もとよりこれらの点や過払金の額について本件和解においてXが何らかの譲歩をするものではなかった。
 
<解説>
原審は表裏一体説。

①客観的に金銭消費貸借に基づく借入金返還債務が存在するという法的命題と②客観的に過払金返還請求権が存在するという法的命題とは確かに論理的には相容れない。
but
①の法的命題と③金銭消費貸借契約に基づく借入金返還債務が存在することを確認して弁済方法等について合意をしたことは、③の内容が事実の範疇に属する以上、これらを区別すべきであり、
③の合意が和解契約にあたるかどうかについては、合意の当事者間に争いが存在したかどうか、その争いをやめることを約したかどうかを証拠に基づいて認定することを要する。

表裏一体説は、法的命題の論理関係という問題と、民法695条の要件事実についての認定問題とを混同するもの。

裁判例には、和解を締結するに当たり過払金返還請求権が存在することを認識していなかったとしても、法律の不知によって錯誤を生じていたに帰するとして、錯誤の規定が適用されないとするものもあるが、本判決が付言するように、法律の錯誤も民法上は要素の錯誤として無効原因になり得る

判例時報2281

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