少年の痴漢認定but不処分
東京家裁H27.4.30
少年の痴漢認定but不処分
<事案>
少年が電車内において隣の座席に座った女性の胸を指先で触るなどのいわゆる迷惑防止条例違反の非行をしたとして家庭裁判所に送致。
少年は、被害者とされる女性の隣に座っていたことは認めたが、当時は眠っており故意に触ったことは否認。
裁判所は、当該女性及び目撃者とされる男性の証人尋問を実施⇒少年の非行を認定。
保護処分については、その必要がないものと判断し、保護処分に付さない旨の決定。
<解説>
少年が事実を争い、送致された記録中の証拠のみで非行事実を認定できない⇒職権で証拠調べ。
証拠調べの範囲、限度、方法の決定は、家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられる(最高裁昭和58.10.26)。
手続保障も考慮すべき。
最高裁H58.10.26:
少年・付添人に立会の機会を与えないまま犯行の目撃者を参考人として審判廷外で取り調べた家庭裁判所の措置に合理的裁量の誤りはないとした抗告審決定に対し、反対尋問の機会を保障しないなどの措置が憲法違反であると主張して再抗告がなされた事案。
同主張を単なる法令違反の主張として排斥したものの、職権判断として「非行事実の認定にあたっては、少年の人権に対する手続上の配慮を欠かせない」と判示。
団藤裁判官の補足意見では、少年又は付添人に当該目撃者の供述を得るについて立会い及び反対尋問の機会を与えなかった家庭裁判所の措置が、合理的裁量の範囲を逸脱するもの、すなわち違法との見解。
少年審判は、刑事裁判手続のように行為に対する罰として制裁を科すものではなく、少年自身の更生すなわち再非行防止のためのもの。
⇒
再非行に及ぶ可能性が低いと判断できればあえて保護処分に付す必要はない。
but
少年が非行を犯したと認められるにもかかわらずこれを否認している場合、多くは少年自身の反省が十分ではないと評価される。
判例時報2279
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