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2016年2月27日 (土)

システム開発を目的とする契約と債務不履行責任(否定)

大阪地裁H26.1.23    

システム開発を目的とする契約と債務不履行責任(否定) 
 
<事案> 
ユーザーであるXが、ベンダーであるYに対し、経営情報システムの開発の請負契約を締結。
Yが同システムを完成させなかった

①主位的に債務不履行により損害賠償請求に基づき
②予備的に解除による原状回復請求権に基づき
支払済みの代金相当額及び遅延損害金の支払を求めた。 

反訴は、YがXに対し、上記システムの開発は完成しているとして、
①上記請負契約に基づく本件仕事の代金残額
②Xとの間で、完成を条件として締結していた保守契約を不当に破棄されたとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償
③Xとの間で、本件請負契約とは別のシステム第二次開発の作業(A区分部分)の受注契約に基づく代金、
④Xが保守契約を締結しなかったのは不法行為であるとして損害賠償を、
各遅延損害金とともに求めた事案。
 
<判断>

システム開発は完成している⇒Xの本訴請求を棄却。 

Yの反訴請求のうち、
①の本件仕事の残代金及び③の第二次開発の仕事の代金及び各遅延損害金について請求を認めた。
but
保守契約は成立しておらず、更に締結しなかったことが不法行為にはならない⇒②及び④の請求は認めなかった。

●本件システム開発契約の内容 
X:提供した資料について基本設計書であると主張。
判決:①ドキュメント相互で用語の統一が図られていない、②各画面毎の入力属性の説明がない⇒基本設計書としての内容を備えたものとは認められない

X:Mの脱退に当たり、基本設計所の作成責任者がXからYに変わった
判決:Xが、Mの理論に基づく設計は困難であるとして、Mとの契約を打ち切ったものであり、YがXに対して、基本設計を担当することの承諾を求めたが、Xがこれを承諾しなかった基本設計書の作成責任者がXからYに変わったとは認められない

●本件仕事の範囲は本件仕様書の範囲に限られるか? 
X:Yが第二次開発に当たると主張する部分についても、本件仕事に含まれると主張。
判決:XとYが、M脱退後、仕様の確定時期までに仕様とした部分を本件請負契約の対象とすることに合意した上で、その後、Yがドキュメントを提供し、Xが確認した上で、最終的にXの担当者が承認する形で本件仕様書が作成されていった経緯本件仕事の範囲を本件仕様書の範囲に限られる
本件仕様書完成後に新たな開発対象とした部分は、本件仕事とは別の第二次開発に含まれる。

●本件仕事の完成の有無 
X:多数の項目において不具合を主張し、本件仕事は完成していない
判決:本件仕事が完成したと認められるために求められる品質は何かを検討
Yが行うべきとされる本件仕事の範囲が、本件仕様書に定められた仕様に従って詳細設計より下流工程にある作業を行うこと
⇒Yが本件仕事を完成したか否かは、本件仕様書の内容に従って開発行為を行ったといえるか否かで判断される。

プログラムミスに起因するエラーは、試験稼働中に発見され、検収までに補修されることもあるが、検収後、本件システムを稼働する中でも発見せざるを得ないものもある⇒その後のメンテナンスの中で、賄われるべき一定のプログラムミスは許容されていた

それが仕事の完成と評価されないためには、部分的なプログラムミスにとどまらず、本件仕様書の記載に明らかに反し、軽微で容易に改修ができるものではなく、システム全体を見直しを行わなければならないほどの欠陥であると認められなければならない。
Yが仕様に従った作業を行ったかを踏まえ、Xが主張する欠陥について個別に検討し、いずれも仕事の完成を妨げるような欠陥ではなく、本件仕事は完成している。

●保守契約を締結した事実は認められない。
Xは、本件仕事が完成しないという認識を示していた⇒そのような認識をYも熟知していた以上、保守契約の締結に向けての法的保護に値する信頼があったとは認められない。 
 
<解説>
システム開発の契約では、①情報伝達の困難性、②専門技術に関する知識の非対称性、③合意形成の過程で多数者が関与
⇒合意形成過程においての認識の齟齬が生じ、これに気付かないままプログラム開発の製造工程に入ることが少なくない。

①ベンダーの提案に対し承諾を与えるユーザーについても、提案に対する相応の理解と責任が求められる。
②検収の前後で、一定のプログラムミスに起因するエラーの発生は不可避という実態。
ベンダーにとっての債務の履行としては、確定した仕様どおりに作業を行うことにほかならない
仕事が完成したといえるか否かも、そのような契約生成過程、結果を含む製造工程の実態を踏まえたものとしてとらえる必要。

判例時報2278

大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
 
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