組織的な犯罪の処罰及び販売収益の規則等に関する法律3条1項9号の「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」
最高裁H27.9.15
組織的な犯罪の処罰及び販売収益の規則等に関する法律3条1項9号の「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」
<規定>
組織的犯罪処罰法 第3条
次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
十三 刑法第二百四十六条(詐欺)の罪 一年以上の有期懲役
<上告趣意>
一審、原審では、詐欺罪の成否を中心に争われた。
上告趣意では、法令違反及び量刑不当のみ主張。
本件会社の一般の営業員や電話勧誘員には詐欺行為に加担しているという認識がなかったところ、組織的詐欺罪の成立を認めるには、メンバー全員が、自らその団体の活動に参加する意思を抱き、そのようなメンバー全員の意思が結合することで、犯罪組織を形成する必要があると解すべきとの主張。
<判断>
詐欺にあたる行為を実行することを目的として成り立っている組織により行われた」といえるか?
被告人はもとより、本件会社の主要な構成員にあっては、遅くとも平成21年9月上旬の時点で、本件会社が実質的な破たん状態にあり、集めた預託金をを返還する能力がないことを認識したにもかかわらず、それ以降も、役員及び従業員らによって構成される組織による営業活動として、施設利用預託金等の名目で金銭を集める行為を継続したとの原判決の認定を前提に、上記時点以降の営業活動は、客観的にはすべて「人を欺いて財物を交付」させる行為にあたることになる⇒そのような行為を実行することを目的として成り立っている上記組織は、「詐欺罪に当たる行為を実行するための組織」に当たることになったというべき。
上記組織が、元々は詐欺罪に当たる行為を実行するための組織でなかったからといって、また、上記組織の中に詐欺行為に加担している認識のない営業員や電話勧誘員がいたからといって、別異に解すべき理由はない。
<解説>
組織的犯罪処罰法3条1項は、犯罪に当たる行為が、団体の活動として、これを実行するための組織により行われた場合の加重規定。
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このような場合は、通常、継続性や計画性が高度で、多数人が統一された意思の下、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って一体として犯罪を実行するという点で、その目的実現の可能性が著しく高く、また、重大な結果を生じやすいなど、特に違法性が高いといえる。
判例時報2278
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