傷害保険の被保険者の死亡事故が約款に定める死亡保険金の支払事由である「急激かつ偶然な外来の事故」に当たるということはできないとされた事例
札幌地裁H26.12.26
傷害保険の被保険者の死亡事故が約款に定める死亡保険金の支払事由である「急激かつ偶然な外来の事故」に当たるということはできないとされた事例
<事案>
A子が運転していた自動車が岸壁から海中に転落したことにより、死亡。
原告らが、A子を被保険者等とする傷害保険契約等に基づいて、各被告に対し、合計4000万円の死亡保険金等の支払を求めた事案。
<争点>
①本件事故は「急激かつ偶然な外来の事故」に該当するか
②本件事故についてA子の重大な過失があるか否か
<判断>
①A子の身上等、②原告会社の経営状態、③A子の経済状態、健康状態、④本件事故の当日のA子の行動、⑤本件事故の態様(本件事故現場の状況、本件事故後に本件事故現場に残されていた痕跡等、本件事故後の本件車両の状況、警察関係者の説明及び判断)について詳細に認定。
普通傷害保険契約における死亡保険金の支払事由を「急激かつ偶然な外来の事故」による死亡とする約款に基づいて保険者に死亡保険金の支払を請求する者は発生した事故が偶然な事故であることについて主張立証責任を負う。
ここに「偶然な事故」とは、被保険者の意思に基づかない事故をいうと解される。
本件事後が偶然な事故であること、すなわち、本件事故がA子の意思に基づかない事故であることが合理的な疑いを超える程度にまで真実であると立証されているということはできない。
⇒
原告らの請求をいずれも棄却。
判例時報2273
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