◆驚くべき類似:税(クルーグマン、マクロ経済学)
◆驚くべき類似:税
割当てを理解するためにここまで用いてきた分析は、ほとんど修正することなく、税の予備的な分析をするのにも用いることができる。
■なぜ税は割当てに似ているのか
物品税は財やサービスの売上に課される税。
均衡価格は5ドルで1000万回。うち2ドルは税。
⇒(同じ手取りを望むため)税額の分だけ供給曲線を上にシフトさせる。
⇒市場均衡は、1回の乗車の価格が5ドルで1000万回が提供・利用されるE点から、1回の乗車の均衡が6ドルで800万回が提供・利用される点Aへの移動。
乗車への2ドルの課税があるときの均衡は提供・利用される乗車数を800万回に減少させるが、それは2ドルの割当てレントを生じさせる、800万回の割当てを課したときの均衡と同じように見える。
割当てと同じように、税も需要価格と課税前の供給価格の間にウェッジを打ち込む。
唯一の違いは、運転手が2ドルのレントを許可証の所有者に支払うのではなく、2ドルの税を市に支払う。
物品税と割当てを完全に同じものにする方法:
市が、許可証を1回につき2ドルで販売~2ドルの許可証代金は、事実上2ドルの物品税となる。
市が特定の価格で許可証を販売する代わりに800万枚の許可証を発行してオークション⇒許可証の価格は2ドルとなる(もともと800万枚の供給は(需要より)2ドル低い4ドル)。
■誰が物品税を支払うのか
これまで税を売り手が払うという前提
but
それを買い手が払うとしたら?
乗客が2ドルの税を支払う⇒課税前と課税後でタクシー乗車の需要量を同じにするには、乗客が支払う運賃は課税後の方が2ドル低くなくてはならない。
⇒需要曲線は税額の分だけ下にシフト⇒均衡点はEからBに移動し、Bでは市場価格は乗車1回当たり4ドルで、800万回が提供・利用される。
800万回の供給価格は4ドル、もともとの需要価格は6ドル。
but乗客は税金を含めて6ドルを支払っている。
どちらの場合も、買い手は実効価格6ドルを支払い、売り手は4ドルを受け取り、800万回の乗車が提供され、利用される。
税の帰着・・・本当に税を負担するのは誰か・・・は、政府に対して実際にお金を支払うのは誰かということ答えられる問題ではない。
ここでの例では、タクシー乗車に課される2ドルの税は、買い手(乗客)の支払い価格の1ドル増加と、売り手(運転手)の受け取る価格の1ドル減少に反映されている⇒税の帰着は売り手と買い手で半々。
but
供給曲線と需要曲線の形状に応じて、物品税の帰着は異なる分けられ方をする。
■物品税からの収入
買い手と売り手の双方が物品税で損失を被るが、政府は収入を得る。
収入=2ドル×800万回の乗車=1600万ドル。
物品税で集められた収入は、高さが供給曲線と需要曲線の間に税が打ち込んだウェッジで、幅は税が課されたときの売買量である四角形の面積に等しい。
■税の費用
税は割当てと同じく、相互に利益のある取引が生じるのを妨げる。
乗客は6ドルを払うが、運転手は4ドルしか受け取らない。
税がなければ実現していた200万回の潜在的なタクシー乗車があって、それは実現すれば乗客と運転手の双方に便益をもたらすが、税のために実現されない。
税は、過剰負担あるいは死荷重という追加的な費用をもたらす。それは相互に利益のある取引を阻害するという非効率性。
悪く設計された税は、よく考えられた税よりも大きな死荷重を課す。
人々は税を逃れるために行動を変える。
ex.タクシーに乗る代わりに歩くことで、相互に利益を得る機会が失われる。
ニューヨーク州ではタバコ税は州レベルと地方レベルの両方で引き上げられ、1箱3ドルに。
butタバコを栽培するバージニア州では1箱2.5セント。
⇒タバコ栽培州からニューヨークのような税の高い地域への、大規模なタバコの違法取引。
■FICA(連邦保険寄与法)を支払うのは誰?
労働者から7.65%、雇用者も同額支払う。
自分の分担する額だけを支払うのではなく、雇用者が分担する額はすでに低い賃金に反映されているので、実質的に雇用者の分まで支払っていることになる。
雇用者は税金を支払ってはいるが、それは賃金の減少によって全額補償されている。
⇒雇用者ではなく、労働者が税の全額を負担している。
←
労働の供給(その仕事を進んでしようとする労働者の数)が労働の需要(雇用者が進んで提供しようとする仕事の数)よりも賃金率に対してはるかに感応的ではない。
労働者は賃金率の低下に対して相対的に非感応的⇒雇用者は税の負担を低い賃金を通じて簡単に労働者へ転嫁できる。
大阪のシンプラル法律事務所(弁護士川村真文)HP
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